茨城県水戸市に本店を置く地方銀行の常陽銀行が、ネット動画広告を使ったマーケティングで成果を上げている。カードローン商品「キャッシュピット」を告知する30秒のネット動画広告を2本制作し、2016年4月からYouTubeなどに配信。2本の動画広告の完全視聴率が4~9月の6カ月平均で58.5%に達し、KPI(重要業績評価指標)に設定していたカードローンの新規申し込み件数が、対前年同月比で最大2.1倍に増えたのだ。「うまくいって1.5倍程度と思っていたから、想定を上回る成果」(常陽銀行営業推進部ダイレクトバンキングセンター企画グループ調査役の船戸旭氏)である。
常陽銀行に限らず地方銀行は軒並みマイナス金利政策の影響で、利益を上げづらくなっている。比較的高めの金利が見込めるカードローンは今や重要な戦略商品だ。キャッシュピットは、ネットで申し込めるうえ審査は最短60分で即日融資もできる。常陽銀行に口座を持っていなくても構わない。既存顧客はもちろんそうでない人も利用できる商品なだけに、幅広い訴求が重要になる。
幅広い層への訴求を考え地元キャラクターを起用
そこでイメージキャラクターの起用を考えた。白羽の矢を立てたのが、2007年から地元の有志が扮して茨城県内で活動するオリジナルヒーロー「時空戦士イバライガー」だった。商品のイメージカラーと同色の外見で、ピンチを救うヒーローという設定も資金難という苦境を救う商品性とマッチした。何より地元に人気が浸透しているのが決め手になった。まず2015年12月から商品を告知するポスターやチラシに登場させた後、ネット動画広告を制作した。
動画広告の制作と運用は、取引実績のあった動画制作会社のモバーシャル(東京都渋谷区)に依頼。銀行が融資してくれないため強盗を働く相手に対し、イバライガーがキャッシュピットの存在を教えて諭すという「“お堅い銀行員”からはまず出てこないアイデア」(船戸氏)を「ヒーロー王道篇」として採用。現金がないためカードローンを申し込むという定番の内容の「カードローン王道篇」と併せて2本を制作した。
グーグルの協力を得て、市町村単位で細かく配信エリアや日時を調整しながら出稿した。例えば、休日より平日のほうが視聴される傾向が高いエリアでは、出稿を平日に絞ったりした。その結果、カードローンの新規申し込み件数が対前年同月比で最大2.1倍という成果につながった。常陽銀行にとっては、「キャッシュピットのためのマーケティングコストをさほど増やさずにこれだけの成果を上げられた」(船戸氏)ことは大きかった。
今後は、既に実施している茨城県内主要駅に置かれたデジタルサイネージへの配信に加え、ネット動画広告を微修正して関東ローカル局のテレビCMとして出稿することを検討している。カードローンの需要が最も高まる2~3月に向けて、既存の動画広告を生かしたさまざまな手立てを実施していく。