「かっぱ寿司の看板からかっぱが消えた」──。2016年10月以降、回転寿司チェーン「かっぱ寿司」の店舗前を通りがかった人からこんな写真付きのツイートがたびたび投稿されるようになった。かっぱ寿司といえばカッパの兄妹「カーくん」「パー子ちゃん」の看板でおなじみだったが、赤と銀の皿を重ねた新コーポレートロゴに順次差し替えが進んでいる。同チェーンを展開するカッパ・クリエイトは目下、ロゴのみならずメニュー、店内設計などかっぱ寿司のリブランディングに取り組み中だ。新生かっぱ寿司を伝えるべく、SNSキャンペーンを取り入れて、かっぱファンの声をオンライン上で浸透させようとしている。
競争が激しい外食業界にあって、回転寿司は数少ない成長市場だ。富士経済(東京都中央区)によると、2016年の回転寿司の市場規模は6043億円、前年比4.6%増を見込んでいる。だがその成長を支えているのは、あきんどスシロー(大阪府吹田市)や「無添くら寿司」のくらコーポレーション、そしてゼンショーグループのはま寿司(東京都港区)であり、老舗のカッパ・クリエイトは大手4社の中で低迷している。2016年4~9月の中間決算は、売上高が前年同期比5.3%減、営業利益は同89%減だ。
消費者に根付いた安っぽいイメージの払拭を目指す
同社商品マーケティング部部長の牛尾好智氏は、「競争が激しくなる中で『平日90円』などの低価格を訴求しているうちに、消費者の間で“安っぽい”イメージが根付いてしまっていた」と課題を語る。客足が落ちれば店内の活気も失われ、さらに客足が遠のく悪循環に陥っていく。来店客とみられるTwitterユーザーのツイートも、ネガティブな内容の割合が高まっていた。
そこで同社は2016年10月、ロゴのほか商品カテゴリーも見直し、「新生かっぱ寿司」として新たなスタートを切った。遊び心のある創作寿司「特ネタ」と、その時々の旬の旨さを味わえる「旬ネタ」を月替わりで目玉メニューとして提供する。第1弾となった2016年10月の特ネタは、「全国お祭り寿司」と題し、「さっぽろ雪まつり寿司」「仙台七夕まつり寿司」「愛知はだか祭寿司」など見た目ユニークな5種類の寿司を用意した。「青森ねぶた祭寿司」はアボカドとイクラを使った彩り華やかな寿司、「長野御柱祭り」は棒寿司にウナギ蒲焼きを巻き付けて御柱に見立てるなど、工夫を凝らしている。

意識したのは、来店客によるInstagramやTwitterを使った画像投稿だ。思わず皿に手が伸びて撮りたくなるようなビジュアルなネタを用意することで、ユーザーは自発的にカメラアプリを立ち上げ、おいしそうに映るように撮影してシェアする行動に出る。牛尾氏は、「リブランディングのメニューコンセプトとして『はなしのネタ、おいしいネタ』がある。話題にしたくなる商品を提供することで、それがSNSを通じて伝わり、来店を促す力になる」と狙いを語る。
11月には、新かっぱ実感キャンペーンとして「鮮極鮭いくら」について、TwitterまたはInstagramでハッシュタグ「#かっぱの本気」付きで投稿することで同商品が抽選で当たるプレゼントキャンペーンを実施。11月3日~13日の11日間で2311件の投稿があり、テキスト分析したところ、かっぱ寿司と同時に語られる言葉として「美味しい(おいしい)」「うまい」など肯定的な評価コメントが多く上がった。また同期間、あきんどスシローが実施していたハッシュタグ「#スシローぜ」を付けて投稿するキャンペーンよりも活況だったという。来店客のSNS投稿を味方に付けて、かっぱ寿司の反撃が始まろうとしている。