メットライフ生命保険(東京都墨田区)が6月19日から公式YouTubeチャンネルで公開しているネット動画「~わたしのパパとママ~」の再生回数が、順調に増えている。4種類ある動画の合計再生回数が9月末に100万回の大台を突破し、12月1日時点では112万回に達した。「当初の目標は10万回だった」(ブランドマーケティング部ソーシャルメディアマーケティング課の大槻真理子氏)というから、予想をはるかに上回るペースで視聴されている。

子どもが撮った映像を両親にサプライズで見せ、家族のきずなを確かめる<a href="https://www.youtube.com/watch?v=3K50zNrn_Rc" target-_blank>ネット動画「~わたしのパパとママ~」</a>。約13分のディレクターズカット版も公開中
子どもが撮った映像を両親にサプライズで見せ、家族のきずなを確かめるネット動画「~わたしのパパとママ~」。約13分のディレクターズカット版も公開中

 実は本格的に制作したネット動画の公開は、同社ではこれが初めて。きっかけとなったのは、今年4月に販売を開始した新商品「MYDEAREST(マイディアレスト)」だった。既存の収入保障保険を、子育て世代といわれる20~30代の父親や母親を主な対象にするように、リニューアルした商品だ。

 対象がネットやスマートフォンになじんだ20~30代のため、それまで重視してきたテレビCMではなく、「Twitterなどのソーシャルメディアを活用して訴求することを考えた」(ブランドマーケティング部ブランドアクティベーション課の後藤俊介氏)。ちょうどメットライフ生命の香港法人が展開したネット動画が年初に日本で話題になっていたこともあり、「商品コンセプトに通じる家族のきずなの大切さを、YouTube上のネット動画で訴えることで、新規契約者の増加と企業のブランドイメージの向上を図れる」(後藤氏)と踏んだのだ。
 
 ネット動画の制作に当たっては、テレビCMとは異なる、これまでにない切り口であることを重視した。3月に広告会社5社によるコンペを実施。うち1社が提案してきた「子どもの目線で家族を撮った映像を見た両親が、感動の涙を流す」という案を採用した。まず、子役として活動している複数の子どもたちを集め、iPod Touchを渡し、子どもの目線で見た両親の日常を撮影してきてもらう。その映像の中から3人の映像を選び、後日、その両親を別々に試写室に招いてサプライズ上映したところをさらに内緒で撮影し、これらの映像を編集するという手法を採った。

 併せて、「商品や企業の宣伝臭を強く出すとソーシャルメディアでの拡散が見込めないと考え」(大槻氏)、商品名や企業名は極力出さず、動画の最後に商品と社名のロゴを出すだけにとどめた。営業部門などを中心に社内では異論も出たが、「初めての試みだから挑戦させて欲しいとお願いして」(後藤氏)、押し切った。

 ソーシャルメディア上での拡散や、動画を営業の現場でも活用することを考え、制作会社が当初仕上げた約13分の動画を約2分半に再編集して公開した。「家族のきずなについて考えさせられた」「離婚しようと思っていたが思い直した。ありがとうございます」「こんな動画を作るメットライフっていい会社だよね」などのコメントが、Twitterを中心にソーシャルメディア上にあふれ、冒頭に示したように再生回数も上昇の一途。肝心の商品の売れ行きも、「2015年4~9月期の収入保障保険の新規契約件数が、前年同期比で2割増」(コンシューマーマーケティング本部プロダクトマーケティング部マネージャーの小高猛氏)になった。後藤氏は、「予想以上にうまくコトが進んだ」と語る。

社内の価値観すり合わせも目指す

 実は今回のネット動画の公開には、もう1つ狙いがあった。社内の価値観を改めてすり合わせることである。

 メットライフ生命は、従業員の“出入り”が多い外資系保険会社で、かつ米国親会社の経営統合によってアメリカン・ライフ・インシュアランス・カンパニー(アリコ)日本支店を実質上吸収した。日本の保険会社などと比べて、従業員の出身母体や価値観が多様で、メットライフ生命としての価値観やブランドイメージを一丸となって打ち出しにくかった。

 そこで、今回の動画をきっかけに、「営業や商品開発の現場などで働く社員にも、家族のきずなを大切にするという、メットライフが重んじる価値観を改めて定着させる」(後藤氏)ことを狙った。社内のパソコンからはセキュリティ上、YouTubeにアクセスできないため、QRコードを印刷したカードを用意し、スマートフォン経由で今回の動画を見てもらえるようにしたのだ。その結果、社外だけでなく社内でもこの動画が話題になり、「営業の現場での積極的な活用も進んだ」(小高氏)という。

 今後も、今回同様、既存商品をリニューアルするときや、企業ブランドを訴求する際、「ネット動画を使ったマーケティングに積極的に取り組む」(大槻氏)考えだ。