アウディA4の魅力を伝える動画広告の例
アウディA4の魅力を伝える動画広告の例

 アウディの国内販売会社(ディーラー)最大手であるアウディジャパン販売(東京都世田谷区)が、Web動画制作会社のモバーシャル(東京都渋谷区)と組み、パーソナライズド動画生成技術とFacebookの持つオーディエンスデータを組み合わせて制作した動画を広告として配信する試みに、10月28日から11月末まで取り組んでいる。

 パーソナライズド動画生成技術とは、視聴する顧客に合わせて動画の中の一部を差し替えることで、マーケティング効果を高めるもの。企業が持つ顧客の名前・住所といった属性や、ソーシャルメディアが保有するオーディエンスデータなどに基づき、動画の一部、例えば名前を示す箇所を差し替え、一人ひとりに適合した動画を低コストで生成する。

168通りの動画を制作して配信

 今回、アウディジャパン販売は、アウディの代表的セダンである「A4」のマーケティングを展開するため、Facebookのオーディエンスデータを活用して、ユーザー1人ひとりではなく、同じ傾向を持つユーザー群をセグメントし、それぞれのセグメントに合わせた動画を、パーソナライズド動画生成技術を使って制作した。

 具体的には、東京9か所、大阪4か所、計13か所にある同社営業所の近隣地域に居住するFacebookユーザーの中から、「アウディに興味・関心のある層」と「競合他社、例えばBMWやベンツに興味・関心のある層」を抽出。それぞれの層について、クルマ以外の興味・関心項目7つ(ゴルフ、ウインタースポーツ、グルメなど)と店舗周辺のエリア12(大阪中央店と梅田店は共通)を掛け合わせて、計168個のセグメントを定めた。

 そして、それぞれのセグメントに訴求するように、A4の素晴らしさを示すキャッチコピーとなる言葉やポイントとなる絵柄を差し替えた動画を168パターン制作して、Facebook上で動画広告として配信。動画が最後まで閲覧されるか、動画広告をクリックしてアウディA4のLP(ランディングページ)に遷移するか、LPの所定のボタンをクリックするかなどを、数日ごとに測定して、配信する動画広告のパターンを効果の高いものに絞り込むことを繰り返した。最終的には動画広告やLPに掲載された情報に潜在顧客が興味を示して、営業所へ足を運ぶことを狙った。

 アウディジャパン販売がパーソナライズド生成技術を使った動画広告に取り組んだ理由を、同社マーケティング部の海老原育博マネージャーは、「地域に密着して営業するディーラーにとって、消費者をセグメントしてアプローチできるデジタルマーケティングは相性が良いから」と説明する。輸入元(インポーター)であるアウディジャパンが、マスメディアを駆使して広くクルマの認知を図るマーケティングを展開する一方、ディーラーは多くの消費者の中からアウディのクルマに興味を持つ潜在的な顧客を掘り起こし、営業所に来店してもらうのが最も効率がよい。そのため、セグメントごとに異なる動画を、比較的安価に制作・配信できるパーソナライズド動画生成技術に着目した。

 まだ広告配信中なので、今回の取り組みの成果は明らかになっていないが、「これまでの取り組みと比べて、手応えは感じている」と海老原氏。アウディジャパン販売は今後も、顧客をセグメントしてアプローチできるデジタルマーケティングに力を入れていく考えだ。

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