資生堂は2016年に、7年ぶりに商品ラインアップをリニューアルした男性化粧品「UNO(ウーノ)」のブランディングを目的にネット動画広告を配信。複数のクリエイティブを同時期に流して消費者の反応を確かめる「ABテスト」を実施し、広告効果を高めることに成功した。
ABテストによって、どの動画広告が消費者の購入意向を高めるか、どのクリエイティブがどのネット媒体と相性が良いかを確認。効果が高いと見込まれたネット動画広告を、媒体を選んでテスト時よりも出稿量を増やして本格配信した。さらに配信終了後には、消費者の態度変容を調査した。

具体的には次のような手順で取り組んだ。
制作費用を抑えるため、映像制作支援会社Viibar(東京都品川区)に依頼して8種類の広告クリエイティブを制作。配信媒体としてFacebook、YouTube、Twitterの3つを選び、2016年4月に3種類、5月に5種類の広告クリエイティブを、3媒体それぞれで1週間ずつ配信し、消費者の反応を確かめた。
その結果、「Facebookについては、ストーリー性の高い動画広告が最後まで見られる傾向が強く、かつCTR(クリック率)が高いこと。YouTubeについては、他の2媒体に比べて完全視聴率が高いこと。Twitterは、完全視聴率やCTRが他の2媒体に比べて見劣りすることなどが分かった」(資生堂ジャパン パーソナルブランド事業本部パーソナルマーケティング部 UNOグループブランドマネージャーの山ノ井千草氏)という。
8つのクリエイティブから4つを選んで本格配信
それらを踏まえ、テスト時に配信した8つのクリエイティブの中から、完全視聴率やCTRが高く、直帰率の低い4つのクリエイティブを選択。微修正をしたうえで、媒体をFacebookとYouTubeの2つに絞り、6月に1週間、出稿量を増やして本格配信した。そして7月に、動画広告を視聴した人の態度変容を調査した。すると、「UNOブランドの購入意向が5ポイントアップした」(山ノ井氏)という。資生堂が従来、実施してきた類似の動画広告キャンペーンでは、2.8ポイントのアップが平均。本施策の効果は大きかったと言えよう。
また態度変容の調査でKPI(重要業績評価指標)に設定していた「UNOのブランドサイトの認知度」と「若者がUNOを使うとオトナっぽくなるというイメージがある」という2つの点についても、動画広告を視聴すると、ともにポイントが上昇。また、複数のクリエイティブを視聴した消費者は、1つだけしか視聴しなかった場合よりも、購入意向が約3倍高かったという知見も得られた。山ノ井氏は、「ABテストで、今後のマーケティング施策に生かせるさまざまな成果を得られた」と語る。
資生堂は今後も、UNOブランドの訴求に動画広告を活用する計画だ。2017年度以降に、4週間連続で、複数のクリエイティブの動画広告を配信したり、UNOブランドの公式SNSなどに動画を掲載したりすることで、10~20代男性の消費者にUNOブランドを訴求していく考えだ。
今回の取り組みは、資生堂が2015年秋に始めた「意欲的なマーケティング施策と認められると、通常のブランド予算とは別に、全社費用で、結果を厳密に問わずに実施できる」(山ノ井氏)制度を利用した。今回の成功で、社内の他のブランドでも動画広告の活用がさらに進みそうだ。