「アマゾンから妖怪ウォッチの箱で荷物が届いた!かわいい!」──。11月17日以降、ソーシャルメディア上でこんな投稿が箱の写真とともに散見されるようになった。
これは12月19日公開の映画「妖怪ウォッチ エンマ大王と5つの物語だニャン!」のプロモーションで、妖怪ウォッチのキャラクターがデザインされた「アマゾンスペシャル広告ボックス」が一部のアマゾン注文客に届くというもの。アマゾンの配送箱を広告スペースに活用した例としては今春、PS4/Xbox One用ゲームソフト「FINAL FANTASY零式HD」があるが、ダンボールの端に商品告知テキストを印字したシンプルな内容だった。キャラクターで全面ラッピングした今回の妖怪ウォッチ映画告知は、受け取り手の誰もが気づき、話題にしたくなる要素を持っている。
評判は上々だ。Yahoo!リアルタイム検索では、キーワードを含む投稿内容がポジティブかネガティブかを示す「感情の割合」が円グラフで表示される。「アマゾン 箱 妖怪」の“ポジネガ判定”は、ポジティブ29%、ネガティブ5%と、歓喜の声にあふれていた。

だがその5%の少数意見に、看過できない内容が含まれていたので、あえて問題提起しておきたい。問題点は大きく2つ。1つ目は配送対象が無差別だったこと。そのため次のようなネガティブなツイートが飛び交った(文言は一部修正)。
「正直恥ずかしい、やめてほしい。宅配テロだろ」
「アマゾンで日用品買って会社に届けたら箱が……。勘弁してほしい」
「コンビニ受け取りにしてて店員さんに妖怪ウォッチ好きなんですか?って聞かれた」
「DVD注文したらこんな箱で届いた。妖怪ウォッチ系グッズ買ったおっさんみたいじゃないか」
企画・開発元のレベルファイブ(福岡市中央区)広報によると、「配送先はランダム」だという。購入した商品のジャンルや、受け取り場所の配慮はないため、職場で誤解を受けた人、コンビニ受け取りで差し出された箱に目が点になった人、持ち帰りの道中やエレベーターで気まずい思いをした人が続出した格好だ。
過去に妖怪ウォッチ関連グッズの購入履歴がある人や、対象世代の子どもがいると思われる購入履歴がある世帯に配送先を絞っていれば、こうした不満の声は軽減できていただろう。購入履歴に基づいた的確なレコメンドを提示するアマゾンらしいデータドリブンな取り組みが、プロモーションに生かされていないのはいささか残念だ。
子どもの顔写真がSNS上に
問題点の2つ目は、プレゼントの応募に「自撮り写真」を求めていること。ランダムに届く妖怪ウォッチ箱が届いた人は、「サマーウォッチ うたメダル」のプレゼント応募権を持っていることになるのだが、応募手続きには、箱と一緒に撮影した“キミの写真”をハッシュタグ(#yokaiamazon)を付けてTwitter、Facebook、Instagramのいずれかに投稿する必要がある。投稿および映画公式SNSをフォロー(いいね!)した人の中から先着1万人にメダルをプレゼントする流れである。
TwitterとInstagramからの投稿者にはDM(ダイレクトメッセージ)で、Facebookからの投稿者にはコメント欄で当選の連絡をするため、非公開設定での投稿は応募にカウントされない。従ってハッシュタグ(#yokaiamazon)を検索すると当然ながら、親が投稿したであろう子どもの顔写真がヒットする。
過去のさまざまな私的な出来事が蓄積されているSNSアカウントに子どもの顔写真を投稿すれば、個人特定に至る可能性がある。すぐさま事件化する可能性は低いとはいえ、「子どもの写真は載せないようにする」「モザイクをかける」「友人限定で投稿する」といった予防策を取っている家庭は多い。そこへ顔写真をさらすことを応募条件として課すのはいかがなものか。
特段、問題になっていないのは、妖怪ウォッチという極めてアンチが少ない作品であることに救われている面が大きい。他作品でも同様の成果が得られるとは限らない。ポジティブな反響を得た成功施策であると同時に、少数意見から学ぶベきことが多い事例でもある。
