LOHACOは、自社サイトで販売する各メーカーの商品を自分自身でも積極的にマーケティングしている。
例えばLOHACO展の開催に当たり、ソーシャルメディアマーケティング支援のアライドアーキテクツに依頼して、LOHACO展に出品された商品をソーシャルメディア上で拡散するため、3つのマーケティング施策を展開した。
インフルエンサーマーケも展開

まず十数人のインフルエンサーを会見と展示会場に招待し、レポートと商品の撮影投稿を依頼。展示会場に来られないLOHACOユーザーに対しては、特設サイト上に展示会場の写真と質問を示し、主にTwitterで回答すると抽選でクーポンが当たる投稿キャンペーンを展開した。さらに2017年から、ソーシャルメディアと連携して投稿された写真をプリントできるSnSnap(東京都渋谷区)の機器を展示会場に設置。来場した一般消費者にも、写真と引き換えにソーシャルメディアへの投稿を促した。
この結果、インフルエンサーの投稿では、1つの投稿で使われる写真の平均枚数が昨年の約2倍に増え、ユーザー対象の投稿キャンペーンでは2016年の投稿数の3倍に当たる約3000の投稿があったという。「数だけでなく投稿の質も2016年を上回っており、LOHACO展に出品された商品の良さを広く拡散できたと考えている」とアスクル バリュー・クリエーション・センター本部 バリュー・クリエーション・センターの中里裕治部長は満足げだ。

中里氏はLOHACOが積極的に商品をマーケティングする意図をこう語る。「LOHACO専用商品は売り上げが小さくメーカーは広告宣伝費を十分に用意できない。だからLOHACOが、メーカーと協力しながら、マーケティングの一部を展開する」。
実際、ユーザー1人ひとりに対するレコメンドも工夫している。アスクル初のLOHACO専用流通拠点である「AVC(アスクル・バリュー・センター)日高」から出荷される商品に限り、10月から箱に同梱される納品書に、ユーザー1人ひとり異なるレコメンド情報を掲載している。内容は、ユーザーの購入データなどに基づいてLOHACOが推奨する商品と、この試みに参加するメーカーが原資を負担し、データに基づいてあらかじめセグメントしたユーザーに提供する割引クーポンの2種類だ。

始めたばかりで効果はまだ分からないが、「商品を受け取って箱を開けたときが、次の商品を検討する最初の機会という仮説に基づき始めてみた。この取り組みの効果があると分かれば、LOHACOならではのマーケティング策としてユーザーからも支持されるのでは」と成松氏は期待を隠さない。
専用商品ゆえの課題も
マーケティングプラットフォームとして一定の地位を築きつつあるLOHACOだが、課題もある。大きな課題の1つが、パートナー企業であるメーカーが、LOHACO専用商品を他の流通にも流したいと考えたときにどうするかだ。メーカーからすれば販路拡大は売り上げ増の機会でもあるが、LOHACOとしてはできれば避けたい。その折り合いをどうつけるのか。
1つの答えは、キリンビバレッジ「moogy」のケースだ。発売当初はLOHACO専用商品だったが、現在はアマゾンなど他のECサイトでも売っている。
ただし、最新デザインの商品があるのはLOHACOだけ。他のECサイトで買えるのは、LOHACOが過去に売った旧商品だ。「新商品が欲しければLOHACOへ」というメッセージをユーザーに残しつつ、ある時期が来たら販路は拡大というのが落としどころかもしれない。
「アマゾンエフェクト」という言葉が米国を席巻しているように、ECの巨人アマゾンは日本市場でも攻勢を強めている。楽天など日本の他のEC事業者やリアルな小売店なども、アマゾンへの対抗策を取らざるを得ない。その中でLOHACOは、独自の物流網という強みを生かしつつ、メーカーから見たマーケティングプラットフォームというポジションに磨きをかけている。
そんなLOHACOと協力し、いかに使いこなして最先端のマーケティングを実現し、収益を上げるか。LOHACOとパートナー企業の取り組みから学べるところは多い。