「スコッティ」ブランドのトイレットペーパー(トレペ)などを製造・販売する日本製紙クレシア(東京都千代田区)も、LOHACOのデータを商品開発に生かした1社だ。

開発の可否をデータで検証

 日本製紙クレシアは、同じ体積なのに巻かれている紙が通常より長い「長尺タイプ」と呼ばれるトレペの開発に成功。2007年に2倍巻きをダブルで、次いでシングルでも、そして2016年に3倍巻きをダブルで、それぞれ発売。LOHACOでも販売したところ、LOHACOのトレペ分野の約7割を長尺タイプが占めるほどのヒット商品になった。

データから潜在的なニーズを発見して商品を開発した日本製紙クレシア
データから潜在的なニーズを発見して商品を開発した日本製紙クレシア
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 そこで日本製紙クレシアは、3倍巻きのシングルを開発するかどうか、LOHACOのデータで検証した。ラボ担当者の協力を得てLOHACOで販売するすべてのトレペを、商品同士の関係を距離などで示すマッピングで表示。併せて、「3倍巻きダブル」を購買したユーザーのレビューデータを分析。どんな単語が含まれるかに着目したクラスタリングをマッピングで表示した。

レビューデータを分析し、長尺タイプのトイレットペーパーの特徴を明らかにした
レビューデータを分析し、長尺タイプのトイレットペーパーの特徴を明らかにした
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 この結果、2倍巻きシングルの近くに商品が存在しないスペースがまだ空いていることが確認できた。レビューデータの分析からは、「交換」「回数」といった交換にかかわる単語や、「コンパクト」「場所」といった収納にかかわる単語が、それぞれ関連付けてよく使われていることも分かった。同社は3倍巻きシングルへのニーズが確実にあると判断して開発を決定。2017年11月1日にLOHACOでの発売にこぎつけた。「LOHACOのデータを商品開発に踏み切るかどうかの検証に活用したケース」とLOHACOの成松氏は解説する。

アウトレットとまとめ割を結合

 LOHACOのデータを活用して成果を上げているのは、商品開発の分野だけではない。データを活用したプロモーション施策でも大きな成果が上がっている。というのも、ECマーケティングラボの第1期(2014年)から第2期(2015年)にかけての主な研究テーマは、プロモーションへのデータ活用だったからだ。実際、ラボで開発されたいくつかの手法がLOHACOの恒常メニューとして定着している。

顧客の購買行動をアソシエーション分析し、まとめ買いしやすい商品を「まとめ割」として展開
顧客の購買行動をアソシエーション分析し、まとめ買いしやすい商品を「まとめ割」として展開
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 例えば、「まとめ割」。多くの商品のうちどのカテゴリーの商品が同時によく買われるかを購買データに基づいてアソシエーション分析。バブルが近くて同時に買ってくれそうな商品をサイト上で示し、まとめて購買した場合に価格を割り引く。

 もう1つは「サンプリング」。データ分析でその商品に興味を示しそうなユーザーを抽出し、当該ユーザーがLOHACOのECサイトを訪れたらサンプル商品を表示。希望者にサンプル商品を送って商品の継続購買につなげる。

 次回は、まとめ割とアウトレット販売を組み合わせた調味料大手のMizkan、ユーザーをターゲティングしてサンプリングに活用しているエフティ資生堂の事例を紹介する。