2018年4月から民放5局(キー局)のテレビスポット広告(CM)の取引指標が世帯視聴率から個人視聴率に変更となり、さらにタイムシフト視聴率も加味した新制度に移行することが分かった。
世帯視聴率をベースとした現行の制度はテレビ放送の広告取引が始まって以来のものとされ、「歴史的な変更」となる。
新指標への変更は2017年8月、民放5局らが、広告主企業が加盟する日本アドバタイザーズ協会(東京都中央区、JAA)などに説明。その後、数カ月にわたってJAA内部で議論が続いていた。
制度変更における論点の第1である個人視聴率への変更については、さまざまな異論が出つつも、一定の理解を示す広告主が少なくなかった模様だ。しかし、論点の第2であるタイムシフト視聴率の導入には、多くの広告主が懸念を表明していた。
「CMを飛ばして見ることが多いタイムシフト視聴をそのまま在庫とすれば、今よりも割高になる」(大手飲料メーカーのマーケティング担当者)というのが懸念の中核。中には、「これは一方的な値上げ通告ではないか」(大手日用品メーカー)というシビアな意見もあった。
係数見直しで値上げ回避
そこでJAAは民放5局らと議論を重ねて、世帯視聴率から個人視聴率に移行する際に使う「移行係数」を見直すなどして、新指標でも値上げにならない(=ほぼ等しくする)仕組みを検討。10月下旬に開催した電波委員会・セミナーで現状よりも値上げにならないことを前提に民放5局からの提案について「賛同」を表明。事実上、この新指標について合意した。
ちなみに、新指標に使うタイムシフト視聴率は「C7」と言われるもの。リアルタイム放送の後、7日目までに見られた「CM枠」視聴率の平均(個人全体)であり、CM飛ばしされた分は含まない。
こうしてJAAの賛同を得た民放5局は現在、個々の企業に対して新指標の説明と個別事情のヒアリングをしているところ。その過程で出てきたさまざまな要望は2018年4月をメドに集約。広告主側などとの協議を重ねて、2020年にはさらなる新制度での運用を目指すという。