ライオンは人気アーティストGReeeeNと組み、食器用洗剤「CHARMY Magica(チャーミーマジカ)」の販促キャンペーンを同社が運営する生活情報サイト「Lidea(リディア)」のコーナー「家事フェス」などを使って、11月18日から来年1月20日まで展開する。2014年10月に開設したLideaを、自社商品の販促キャンペーンに本格活用する最初の取り組みとなる。

消費者がスマートフォンからキャンペーンサイトにアクセスして、「写真を撮る」ボタンで購入したMagicaを撮影するとプレイリストが現れて、ストリーミング再生で曲を聞くことができる。用意するのは、GReeeeNがこのキャンペーン用に制作した3分ほどの新曲「eeeeveryday」と、既存曲をミックスした10分ほどの「CLeeeeaN KITCHEN MIX(キャンペーン限定)」の2曲だ。新曲は、CDが発売される直前の12月5日までこのキャンペーンサイトでしかフルコーラスが聞けないようにして、GReeeeNのファンを含め主婦層などを広く誘導することを狙う。
Twitter連動キャンペーンも進める
本キャンペーンでは、流通の店舗やソーシャルメディアも活用する。まずMagicaを販売する店舗にボードやPOP、シールなどを配布して、このキャンペーンを消費者に告知する。12月5日以降は、「3種類ずつ用意した消しゴムハンコとメッセージ付箋を景品としてMagicaにベタ付けし、キャンペーン告知と商品購入を働きかける」(ヘルス&ホームケア事業本部リビングケア事業部副主任部員の松木慎氏)。また、Magica公式Twitterでキャンペーンを告知し、ハッシュタグ「#Magica #GReeeeNキャンペーン」を付けて「食器洗いを楽にする工夫」を投稿してもらう企画も実施する。11月21日から12月11日までの第一弾では、GReeeeNの新曲DVDと、台所の電源ソケットに差し込んで使えるLED電球スピーカーを抽選で3人にプレゼントする予定だ。
実は、ライオンは今回のキャンペーン実施までに、1年がかりで周到に“準備”を進めてきた。
Lideaは、同社が運営していた複数のオウンドメディアを集約する形で2年前に開設。掃除や洗濯といった家事に関する課題を解決するアイデアなどを掲載することでアクセスを集め、会員データやアクセスデータを分析することで、流通に対する新たな売り場提案につなげるのが大きな目的だった。
しかし1年ほど前からライオンは、家事における目先の困りごとを解決する切り口とは異なるコンテンツを充実させてきた。代表例は「家事フェス」というコーナーだ。これは「音楽を聞きながら家事をしましょう」という、主婦層の生活に“彩り”を与えるきっかけとなることを目指した提案型コンテンツである。具体的には、音楽ソフト会社大手のユニバーサルミュージックと提携し、「掃除機がけ」「食器洗い」「風呂そうじ」というシーンにふさわしい曲を3曲ずつサイトに用意。消費者がスマホで曲を聞きながら家事を“楽しめる”ようにした。
昨年11月30日から今年1月31日まで約2カ月間、この「家事フェス」の認知プロモーションを実施したところ、同コーナーのUU(ユニークユーザー)数は約4万7000にもなった。「一定の消費者に音楽を聞きながら家事を楽しむ、という提案を受け入れてもらえた」と宣伝部デジタルコミュニケーション室主任部員の中村大亮氏は話す。
この結果を受けて、家事フェスのような提案型コンテンツを、売り上げにつなげる販促キャンペーンに仕立てたのが、今回のGReeeeNとのコラボである。これによってLideaは、流通向けの売り場提案のためのデータ収集プラットフォームになるという第1の目的に加えて、消費者向けキャンペーンのプラットフォームとしても活用するという、第2の目的を持つことになった。
データで得た「20℃以下で衣替え意識向上」という知見
もちろん当初の目的である、流通に対する売り場提案も積極的に進めている。例えば、今年夏には流通向けに、衣替えをテーマにした新提案をしている。元々、春と秋の衣替えの時期に、洗剤などの売れ行きが上がることは経験則で分かっていた。そこでDMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)で会員データやアクセスデータと、外部のソーシャルリスニングデータを使って、より詳細な分析を試みたところ、次のような知見が得られた。それは、85%以上の消費者が5月と9月に衣替えを実施すること。その際に黄ばみと虫食いに悩まされていること。そして、秋は気温が20℃以下になると衣替え意識が向上する、といったことである。

そこでライオンは、衣料用洗剤や柔軟剤だけでなく、防虫剤や収納ケースなどを揃えた売り場を作るよう提案。さらに、地域ごとに20℃を下回る前には展開を始めると良いといったアドバイスも加えた。中村氏は、「想像以上に受けがよく、提案にほぼ近い売り場を実際に作ってくれた店もあった。売り上げ増につながるだろうという手応えを感じた」と話す。
このように流通向けの提案から出発して、消費者向けのキャンペーンにも活用できるプラットフォームへと成長したLidea。ライオンは今後もその活用を進めて、業績向上につながるオウンドメディアとしての価値をさらに高めていく考えだ。
ライオンより、取材時に伝えた名称が違っていたと申し出があり、Twitter連動キャンペーンに付けるハッシュタグの名称を修正しました。[2016/11/21 15:35]