みずほ銀行が「ネット住宅ローン」の受付サイトを改善し、事前審査を通った人のうち住宅ローンの借り換えを正式に申し込む顧客の割合(CVR、成約率)を、改善前の約2倍に伸ばしている。今年4月から申し込みを受ける際に、「申込ボード」と名付けた顧客ごとの専用サイトを提供してWeb上で手続きが完結するように変えた。またチャットやメッセージを使ったコミュニケーション手法も導入して、利便性向上と顧客とのコミュニケーションの円滑化を図ったのが奏功した。

みずほ銀行がネット住宅ローンを開始したのは2014年12月だが、Webで可能なのは事前審査の申し込みだけだった。事前審査を経て正式申し込みの段階になると、顧客は住民票など手続きに必要な書類を集め、住宅ローン専門の担当者と電話またはメールでやり取りしながら申込書に記入し、銀行宛に郵送する必要があった。手間と時間がかかるため、「申し込みの途中で離脱するお客様が多いのが課題だった」(みずほ銀行個人リテンション推進部システム推進チームの瀧谷祥子調査役)。
そこで2016年夏、Webマーケティング支援のメンバーズに依頼し、申込書の入力フォーム化と、必要書類をスキャンしてアップロードするなどの方法で、正式審査もWebで完結できるように、Webサイトを作り変える検討を開始。スマートフォンからのアクセスが増えていたことを踏まえ、スマホでも見やすいようにサイトを改善。今年4月28日から提供し始めた。
事前審査ページを改善、最後まで入力する割合を2倍に
まず事前審査ページの見せ方を変えた。以前は約60の必須入力項目をすべてサイト上で見せていた。これを改め、ある質問への回答によってその後の入力項目が分岐する場合は、その後の入力項目を見えないようにするなどして、見かけの項目数を削減。デザインも見やすいように変えた。その結果、「必須入力項目を最後まで入力してくれるサイト訪問者の割合は、改善前の約2倍に上昇した」(瀧谷氏)という。
さらに、新たに設けた正式申し込みのページでは、「人と人とのコミュニケーションを心がけた」(みずほ銀行個人リテンション推進部システム推進チームの高梨昇次長)。事前審査の段階では、チャットを使って簡単な質問に答えるようにしていた。正式申し込みの段階では、顧客ごとの専用サイトにメッセージ機能を導入。住宅ローン専門の担当者が顧客1人ひとりとやりとりするようにした。実際、「何度も担当者とメッセージをやりとりするお客様のほうが、やりとりをしないお客様に比べて、成約することが多い傾向にある」と高梨氏は語る。
この結果、事前審査で承認された日から正式申し込み(従来は申込書の銀行到着、現在はWebサイト上の申し込み画面への入力)までの期間が、従来の平均21日から13日へと短縮。冒頭で示したように、事前審査を通った人のうち住宅ローンの借り換えを正式に申し込む顧客の割合もサイト改善前の約2倍になったという。
みずほ銀行は今後も、ネット住宅ローンのWebサイトの改善を継続していく考え。併せて、チャットやメッセージに残ったログをデータ化して蓄積・分析。顧客とメッセージ機能を使ってやりとりする担当者のスキルアップを支援したり、住宅ローンを申し込んだ顧客が口座を持つ営業店(支店)にログから得られる情報を開示して、営業店担当者からのクロスセルの働きかけに役立てたりすることも進めていく。