成果を上げるのが難しいと言われるメーカーEC(電子商取引)に日清食品が再挑戦している。2000年に開設した自社ECサイト「日清 e-めん Shop」を2016年9月30日にリニューアル。取り扱い品目を日清食品グループ全体に広げた「日清食品グループ オンラインストア」へと衣替えした。
従来はケース単位でしか購入できなかったものを商品1個からでも買えるようにしたり、送料無料になる最低金額を5000円以上から2000円以上へと引き下げたり、5~7日かかっていた配送日数を2日に短縮したりする改善を実施。サイトUI(ユーザーインターフェース)も、スマートフォン利用を意識したデザインに変更した。ファミリーや中高年が中心だった利用者を若年層などにも拡げて、1年以内に従来サイトの3倍の売り上げを達成することを目指す。

日清が16年ぶりとなる全面刷新を決断した背景には、売り上げの大幅アップに加えて、大きく2つの狙いがあった。1つは日清食品グループの多様な商品を消費者に知ってもらい、日清ファンを増やす認知の場として活用することである。
日清の「カップヌードル」や「日清のどん兵衛」といった商品は全国津々浦々どんな小さな小売店でも売られているイメージがあるが、それは定番品に限った話だ。「大手のスーパーでも10種類ほど陳列してあれば多いほうだ」と、刷新を主導した佐藤真有美マーケティング部ECグループブランドマネージャーは話す。グループ会社の商品は従来のサイトでは扱っておらず、湖池屋を除くと自前のECサイトも持たなかった。そもそも消費者の目に触れる機会が限られていた商品も多かったのだ。
新サイトでは、日清シスコなどグループ会社の商品は地域・季節限定品などを含めて、すべて扱う方針だ。現時点で400アイテム以上を販売している。今後も新商品などを随時追加すると同時に、商品やブランド理解につながるコンテンツの拡充などにも務め、消費者と直に接するブランディングの場としてさらに強化していく。
刷新に合わせてプライベートDMPを導入
狙いの2つ目は、データを入手するプラットフォームとすることである。刷新時に実施した「生カップヌードル」プレゼントキャンペーンがネットで大きな話題になったことも手伝い、10月末までの1カ月で登録会員数が数万人増加。「特に30代以下の若い世代の増え方が著しい。全体の35%を占めるまでになっている」(佐藤氏)という。
こうした会員の行動データを、新たに導入したプライベートDMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)で分析。新商品にいち早く反応するのはどのような属性の消費者か、よく合わせ買いされるのはどんな商品か、といったさまざまな分析が可能になった。
データ分析の結果は当面、SNSで拡散が期待できるキャンペーン設計や新商品の企画などに活用。リターゲティング広告を出稿してすぐに刈り取るといった活用には慎重な姿勢だ。「従来のECサイトで、目先の売り上げを確保しようとリタゲ広告やアフィリエイトをやり過ぎた」(佐藤氏)ことの反省だという。リタゲ広告などを利用しなくても「日次の売り上げで見ると、少ない日でも従来サイトの2倍、多い日だと100倍程度になっている」と佐藤氏は、売り上げ3倍という目標達成に自信を見せる。今後もデータに基づいて消費者インサイトを深く理解するという基本を外すことなく、データドリブンなマーケティングをさらに推進していく考えだ。