リノベーション(住宅の大規模改修)を前提とした中古マンションの販売支援を手掛けるリノべる(東京都渋谷区)が、データのマーケティング活用の範囲を拡大させる。同社はマーケターが自ら顧客管理のアプリを開発するなどして、マーケティングに活用できるようにデータの基盤を整備。さらに、アプリとMA(マーケティングオートメーション)ツールのデータ連携を進めて、見込み客のニーズに合わせたメール配信の最適化などに取り組んだ。

 その結果、9月には、資料請求後にショールーム見学を申し込む数が、半年前の3月と比較して1.7倍になり、2016年7〜9月期の商談数は前年同期比で43%増になる成果につながった。また、新たに物件のデータベースの構築を進めており、今後は2つのデータベースを連携して広告配信にも活用するなど、さらにデータの活用範囲を広げて、施策の効果向上を狙う。

リノべるのサービスサイト
リノべるのサービスサイト

 リノべるは、マンションの購入を検討する消費者と不動産会社、そしてリノベーションを手掛ける工務店をつなげるマッチングサービスを手掛ける。同社の営業担当者が物件探しから、対応可能なリノベーションを手掛ける工務店の紹介をワンストップで請け負うことで、リノベーションした中古マンションの購入のハードルを下げている。リノベるはリノベーションを手掛ける工務店からもらう手数料を収益源としている。

 商談に至るまでの流れは大きく2つある。1つはリノベるのサイトで見つけた物件に関する問い合わせから始まるケース。もう1つは、リノベるのサイトから資料請求をして、その後、ショールームやリノベるの顧客の自宅の見学を申し込み、リノベーションされたマンションを体験してから、具体的な検討を始めるケースだ。

 問い合わせからショールームへの来場、そして実際の商談につながる確度を高める上で、見込み客のニーズに合わせた、きめ細やかな情報配信が求められる。そうした施策の実行には、見込み客のデータが重要になる。

 ところが、従来の顧客データベースは、機能などの面からマーケティングへの活用に大幅な制限がかかっていた。「レコード数に限りがあり、しかも誰でもデータベースに変更を加えられる環境だったため、気づけばレコードが勝手に削除されていたり、項目が追加されたりしていて、データとして乱雑。マーケティングには非常に使いづらい状況だった」と取締役CMO(最高マーケティング責任者)の渡会雄一氏は振り返る。 

 実際に来場につながった顧客の流入元や、家族構成といったデモグラフィックデータ、そして来場後に商談につながったかといった分析をしたくても、それぞれのデータをダウンロードしてから、表計算ソフト「Excel」上でつなぎ合わせなければならない。「データの断片化により、その集計に無駄な時間がかかっていた」(CS事業部の齋藤竜太氏)。データを活用するには、まず土台となる顧客データベースの整備が喫緊の課題となった。

基幹システムの外注を断念した理由

 当初はITベンダーに依頼して、基幹システムを一から再構築することを検討した。しかし、「マーケティングに活用するデータは日々、変動している。実際にシステムが組み上がった時に拡張性がなかった場合には、使えないシステムになってしまう恐れがあった」(渡会氏)。とはいえ、自社で内製するリソースもない。開発の知識を持たないマーケターが、自ら顧客のデータベースを構築する方法がないかと検討するうちに、たどり着いたのが、サイボウズが提供するアプリ開発サービス「キントーン」だった。

 キントーンにはマーケティングや顧客サポート、人事などの目的に応じた100種類以上のアプリのテンプレートが用意されており、そのテンプレートを選んでExcelのデータなどを連携するだけで、開発の知識がないマーケティング担当者でも、必要なアプリを開発できる。リノベるはキントーンを使って顧客管理アプリを開発。8月にMAツール「マルケト」と連携することで、顧客データに基づいたメールの自動配信を可能にした。

 データに基づいたシナリオ設計は、まだそれほど多くはないが、例えば資料請求時のアンケートデータに基づいて、子供のいる世帯であれば、近しい家族構成の施工事例を紹介するなど、単身、夫婦、子供のいる世帯向けでメールを出し分けて、ショールームへの来場を促している。こうした施策を実施した結果、前出の通り、今年9月の資料請求後にショールーム見学を申し込む数は、半年前の3月と比較して1.7倍になった。今後は、「子供の年齢などもアンケートで取得しているため、小学校に入学するタイミングなど、見込み客の転機に合わせてメールを配信するなど、より深いデータ連携施策に取り組んでいく」(齋藤氏)。

 そのほか、営業担当者が進捗情報を入力するアプリの開発や、顧客管理アプリとアクセス解析サービス「Google Analytics」のデータ連携も進めた。顧客データは1つのIDにすべてのアプリのデータがひも付くため、初回のサイト訪問から契約までを時系列で一貫して分析するといったことも可能になった。さらにキントーンを使い、物件情報の管理アプリも開発を進めている。この物件情報と、顧客管理アプリに登録されている見込み客の物件の希望条件を連携することで、「物件情報を広告クリエイティブに反映した、リターゲティング広告の配信も実現したい」と渡会氏は語る。

 リノベるは、データを活用するための基盤を着実に整えつつある。今後は営業部門に対して見込み客データを受け渡して商談の精度を高めるなど、マーケティング部門と営業部門が一体となった顧客対応の実現を目指す。