キリンビバレッジ子会社で自動販売機事業を展開するキリンビバレッジバリューベンダーは前面に大型のタッチパネルを配した新型の自動販売機を新たに開発した。この自販機には、珍しい機能が搭載されている。それは、撮影用の「カメラ」だ。

 新型自販機では、商品を購入後に写真を撮影できる。さらに、自販機はネットに接続されており、撮影した写真はスマートフォン向け無料通話・メールアプリ「LINE」経由で受け取れる。この新型自販機は、11月中にも稼働が始まる。年内には数十台を設置する計画だ。

 キリンビバレッジが自販機において、こうした新たな試みに挑む背景には、市場の落ち込みがある。日本自動販売機工業会によれば、2014年末の飲料自販機の年間販売金額は前年比97.4%の2兆1935億円と減少している。キリンビバレッジバリューベンダーのイノベーション推進部販売機器担当の岡部愼一郎氏はその要因をこう説明する。「消費増税後、(10円単位での値上げとなった)自動販売機はコンビニエンスストアなどの小売りに比べて、やや値段が高いという印象から、自販機離れが起きている」。

 とはいえ、自販機は今でもキリンビバレッジの「売り上げのおよそ3割を占める」(岡部氏)規模を持ち、キリンビバレッジにとって重要な販路でもある。また、小売りで売る場合、どの商品を陳列するかといった棚割りは相手主導で決まる。一方、自社で設置する自販機については、販売する商品を自社主導で決められるため、「メーカーとして売りたいものを販売できる」(岡部氏)など、直販ならではの販売戦略も取れる。

 そこで、自販機事業の立て直しを図るべく、自販機の担当部門を切り出して、7月に設立したのがキリンビバレッジバリューベンダーだ。岡部氏の所属するイノベーション推進部は、文字通り自販機に革新を起こし、これまでとは違う付加価値を生み出すことを担う。写真撮影とLINEを連携したサービスも、そうした付加価値につながる可能性があると考えて開発した。

O2Oへの応用も視野に入れる

 具体的な利用方法はこうだ。新型自販機で商品を購入すると、写真撮影の可否が、タッチパネル式の自販機の画面上に表示される。撮影を選択すると、カウントダウンが始まるので、それまでに立ち位置などを決める。海の中など、5パターンの背景画像が用意されており、それらの背景と合成された写真が撮影される。

自販機で写真が撮影できる
自販機で写真が撮影できる

 撮影後に画面に表示されたQRコードを読み取ると、キリンのLINE公式アカウント経由で写真が送信されてくる。写真を受け取るには、キリンのLINE公式アカウントに登録している必要がある。この企画を通じて、商品を購入した顧客をLINE公式アカウントのファンとして獲得することも狙いの1つだ。

 ただ、街の片隅に設置された自販機で写真撮影をするとは考えにくい。そこで、新型自販機は観光地などを中心に設置する。写真撮影においては、今後、観光地に由来する背景画像を用意するなどして、記念撮影的な利用を目指す。

 ただし、カメラ機能はあくまで提供する価値の1つに過ぎない。カメラ以外にもLINEを活用した、O2O(オンラインtoオフライン)も視野に入れる。例えば、LINE公式アカウントでコード付きのクーポンを配信する。そして、自動販売機のタッチパネルでそのコードを入力すると商品がもらえるといった仕組みも可能だという。

 そうした企画を実施する際に、「自販機に搭載されているOSをネットワーク経由で更新するだけで、さまざまな機能が実装できる」(岡部氏)ため、自販機本体を改修することなく、キャンペーンなどを実施できることも特徴だ。こうして自販機を活用した新たな価値の提供を目指す。