ソニーの子会社でインターネット接続事業者大手のソネット(東京都品川区)が、ABテストを繰り返す「テストドリブンマーケティング」(カスタマーコミュニケーション部門UXマネジメント部データマネジメント課デジタルマーケティング戦略担当の各務浩平氏)と名付けた施策を推し進めて自社Webサイトの機能やデザインを改善し、成約率(CVR)などの引き上げに成功している。

 ソネットは現在、個人向けのインターネット接続サービスや格安スマートフォンの販売などに加え、インターネット接続やクラウド上でのIT資産管理といった各種の法人向けサービスも手がける。このため、合計のページビュー(PV)は月間約1億に達するものの、自社Webサイトは事業カテゴリーごとにいくつものページに分かれる。

 そのカテゴリーごとに、ページのPVやCVRなどに責任を持つ営業担当者と、同社のサイト全体の運営をサポートしたり分析したりするチームの責任者である各務氏、それに社内のシステム開発担当者などが、週1回集まってミーティングを実施。組織を横断する形で各カテゴリーのサイトの課題を話し合っている。

ABテストを年間50回実施

 日々のサイト上のユーザーの動きの観察から仮説を導き、どんなABテストを実施すべきかを、ミーティングで議論する。加えて、四半期ごとに課題をまとめてリスト化し、重要性や難易度を加味して解決すべき優先順位を決め、その判断を助けるためのABテストを考えることもする。このため、ソネット全体で、「ほぼ週1回、年間で約50回の、自社サイト改善のためのABテストを実施し、テストの結果を1週間以内に分析している」(各務氏)という。

 例えば、個人向けビジネスの中で使われる申し込みフォームのページ。2014年1月からフォームの機能やデザインの見直しを始め、約2年間で20回近いABテストを重ねてきた。「性別・生年月日」を記入してもらう欄を上のほう(先)に置くのと、下のほう(後)に置くのでは、下のほうがCVRが上がる。必須記入項目ごとに「必須」の文字を注記するのと、いくつかの項目をまとめた大項目のところに注記するのでは、まとめたほうがCVRが上がるなどなど……。ABテストによって得られたこうした知見を反映させていった結果、フォーム改善前に比べて現在は、「CVRが30%アップした」(ISP営業部門ダイレクト営業部支援課の須藤真里奈氏)という。

サイトのクリエイティブもABテストで検証。機能重視型に比べ、ライフスタイル打ち出し型はCVRが53%も上がった
サイトのクリエイティブもABテストで検証。機能重視型に比べ、ライフスタイル打ち出し型はCVRが53%も上がった
サイトのクリエイティブもABテストで検証。機能重視型に比べ、ライフスタイル打ち出し型はCVRが53%も上がった

 接続サービスとセットでタブレット端末をレンタルするプランを紹介するページでも、ABテストを実施した。タブレットをレンタルするというサービスやその機能をプッシュするサイトのクリエイティブと、タブレットを使ったスマートなライフスタイルを打ち出すクリエイティブとをABテストで比べた。この結果、後者は前者に比べ、CVRが53%も向上することが分かったのだ。もちろん、実際のサイトには後者を採用した。

 ソネットがABテストを繰り返すテストドリブンマーケティングを推し進める最大の理由は何か。「大量のデータを揃えて分析し、そこから改善のポイントを導き出すまでには結構、時間がかかる。これに対し、ABテストは、仮説通りの結果が得られないことも含め、とにかく一定期間後に答えが明瞭に出る。その結果を分析することで、結論を出すまでのスピードを速められる」と各務氏は強調する。

 部門横断的な組織で取り組むように体制を整え、かつ「若い社員に任せ、上司がいちいち口を挟まない」という同社の社風もテストドリブンマーケティングを後押しした。

 今後は、個人向けビジネスに関して、今年度に導入したばかりのDMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)を年度内にテスト検証し、来年度に本格活用する予定。このDMPの活用も、テストドリブンマーケティングの思想にのっとって推し進める腹づもりだ。