パルコは10月末から、GPS(全地球測位システム)の持つ位置情報データを用いた、スマートフォン向けアプリ「POCKET PARCO」へのプッシュ通知による情報発信を始める。特定の店舗の周辺にいるアプリ利用者に対して情報を発信して集客につなげる。また、今後は店内に設置した無料のWi-Fiの利用データも組み合わせて、より細かい移動情報をマーケティングに生かすことを目指す。

スマートフォン向けアプリ「POCKET PARCO」
スマートフォン向けアプリ「POCKET PARCO」

 パルコは位置情報を活用したプッシュ通知機能をアプリに搭載するのに先立ち、9月に位置情報を用いた広告配信を実施した。「位置情報を用いることで、実際に店舗周辺にいる人を来店につなげることができるのか。その効果を検証したかった」と執行役WEB/マーケティング部担当の林直孝氏は説明する。その感触を確認することで、位置情報の活用に本腰を入れるべきかの判断材料にしようとしたわけだ。

 広告配信は、9月7~12日に開催したセールに合わせて東京・池袋店を対象に実施した。広告配信では、店舗周辺のエリアを大きく2つに分けて、そのエリアにいる人たちに対して、リアルタイムにスマートフォン向けのディスプレイ広告を配信してセールを告知した。効果測定では、広告の配信対象者を広告の閲覧の有無で2つのグループに分類。そして、その対象者のスマートフォンの持つ位置情報を用いて、パルコの館内に移動したと推測された場合に来店として計測した。これにより広告の閲覧の有無で、来店率に差が表れるかどうかを比較した。

 配信エリアは池袋駅の東口周辺と西口周辺に分けた。というのも、池袋は駅を挟んで、東西に分かれて商業施設や店舗が立ち並ぶ。東西を移動するには広い駅構内を横断する必要がある。パルコは東口に店を構えているため、「西口周辺にいる人は駅で導線が遮断されているため、告知をしても来店につながりにくいのではないかと考えていた」(林氏)。ただ、それもあくまで仮説に過ぎない。広告配信を通じて、その仮説も含めて検証した。

西口向けの配信が大きな効果

 結果としては、大きな効果につながったのは意外にも西口周辺にいる人への広告配信だった。東口周辺にいる人では、広告の閲覧の有無によって来店に大きな差は表れなかった。一方、西口周辺にいる人への配信では、広告を閲覧した人は閲覧していない人に比べて、来店率が29ポイント高まった。「店舗に近い東口周辺にいる人は、既にセール情報を知っていたため、広告の内容にそれほど惹かれなかったのではないか」と林氏は見る。

 その一方で、位置情報は活用次第で来店に結びつくことが立証された。こうして確証を得たことで、アプリに位置情報と連動した情報配信機能を搭載することを決めた。

 さらに店舗の周辺といった粒度の荒い位置情報だけではなく、店舗のどのフロアを訪れたか、といったより細かな位置情報のデータの取得にも取り組み始めた。パルコでは17店舗で、来店者向けに無料で利用できるWi-Fiを提供している。このWi-Fiに接続する際に、マーケティング活用のためにデータを取得するという承諾を得ることで、館内の移動情報を取得できるようにした。これにより、6階のフロアでWi-Fiに接続。その後、8階のレストランフロアや地下2階の婦人服店を訪れて退店した、といった経路が分析可能になった。こうしたデータを毎日3000件取得しているという。

 こうしたデータをすべて蓄積するために、9月にトレジャーデータのDMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)「TREASURE DMP」を導入した。今後はアプリのデータに、こうした館内の移動データも組み合わせることで、位置情報のデータ活用を推進していく。