4つの要素別に結果を見ていこう。発信力の1位はマクドナルドだった。IRのリリース、また「dポイント」「楽天スーパーポイント」を利用できない不具合に関するリリースを除いても、半年で50本を超えた。

 マクドナルドほどの展開規模、体力があってこそ成せる業、と思う人も多いだろう。しかし実際にリリースを見ると、決して矢継ぎ早に新商品を繰り出してそれをリリース配信しているからリリース本数が多いわけではないことが分かる。

1商品で数回リリースするマクドナルド

 注目したいのは、一つの商品またはキャンペーンで、数回にわたってリリースを配信している点だ。最近では、マクドナルドの愛称は「マックなのか?マクドなのか?」をテーマにしたキャンペーンがある。こちらはまず8月2日に、愛称を懸けてマック軍とマクド軍がおいしさ対決をする予告リリースの配信から始まる。対決商品「東京ローストビーフバーガー」(マック軍)と「大阪ビーフカツバーガー」(マクド軍)を5日後の8月7日にリリースし、9日から期間限定発売することを告知。2週間後の8月21日付で、マクド軍が勝利したという対決結果と、優勝セールクーポンの配信を案内した。予告リリース→本リリース→結果リリースの3部構成だ。

要素別のランキング
要素別のランキング

 今年の年明けに実施した「マクドナルド総選挙」も同様だ。昨年暮れに人気バーガーを決める投票企画を予告リリースし、年明けに立候補バーガー12商品が公約を宣言して人気投票するなど具体的な内容を告知。1月25日に1回戦(予選)の結果リリース、2月1日に「ダブルチーズバーガー」が1位になり、公約である「トリプルチーズバーガー」を販売する旨のリリースと、計4回にわたって配信した。

 どちらもリリースするたびにWebニュース記事になり、継続的な話題づくりに成功している。特に総選挙の方は、立候補バーガーがいずれも既存の定番商品で、新商品は一つもないことがリリースとしては新鮮だ。このように、既存商品の販促キャンペーンでもリリースになる。「新商品を出さないことにはリリースを出すネタがない」という考えは、思い込みに過ぎないことを教えてくれる事例である。

 Web掲載力のトップに立ったのはスターバックスコーヒー、次いでマクドナルドだった。今年4~9月のスターバックスのリリース本数は30本で、発信力スコアは52.3と決して高い値ではない。それでもニュース記事になった本数が多く、記事になりやすい企業ブランドと言える。

 特に、10月2日から期間限定で販売した「アーモンドミルク&グラノラフラペチーノ」のリリース(9月25日配信)は多数のWebニュースメディアで記事になった。アーモンドミルクは米国で人気が高まり、セレブ御用達の植物性飲料ドリンクという触れ込みでその人気が日本にも波及してきているところ。ドライフルーツやクラッシュアーモンドを使用したグラノラも、カルビーの「フルグラ」が大ヒットしているように美容関心層には響く素材である。それらがスタバのフラペチーノらしく華やかに映る商品写真は、数あるリリースの中でも埋もれることなく目に留まる。もともとのスタバのブランド力に加え、話題の食材を秋らしい色合いで商品化できたことが、多数の記事掲載につながった。

 同商品の記事を掲載したニュースメディアを見ると、マイナビニュースなどの一般ニュースメディアのほかに、「モデルプレス」「Fashion Press」「isuta(イスタ)」「Pouch(ポーチ)」といった名前が並ぶ。ファッションを中心にコスメ、インテリア、フード、ダイエットなどの情報を発信する、流行に敏感な20~30代女性を読者に持つメディアである。

 そうしたメディアにとってスタバのリリースは“ど真ん中”のニュース価値がある。この層をターゲットとするWebニュースメディアは新規開設が続いているため、記事の掲載本数が増えやすい側面がある。

 女性向けニュースメディアが隆盛するWebメディア事情が、2位のマクドナルドには味方しなかったのかもしれない。「モデルプレス」は、マクドナルドの新商品もよく記事にするメディアではある。だが、記事になっている商品を見ると、「ミックスベリーの葡萄スムージー」などマックカフェ併設店限定で取り扱っている商品や、「マックシェイク チェルシー」「マックフルーリー 森永ミルクキャラメル」など見た目に華やかさや爽やかさがある商品が中心で、バーガー類は「ロコモコ」など女性人気の高い一部商品を選別して掲載している様子がうかがえる。

 続いて拡散力でも同様に、スターバックスがトップ、2位にマクドナルドが続く結果だった。

拡散意欲の高い女性を味方につけたスタバ

 スターバックスは、「アーモンドミルク~」リリース告知ツイートのリツイートが約3万7000件、9月から発売した「グレーピーグレープ&ティージェリーフラペチーノ」の告知が約3万5000件と大量にリツイートされた。コンビニで販売したミントチョコレートのチルドカップも1万件超。「飲んでみたい」「友だちに知らせたい」と思うファンの素直な思いがリツイートとして現れ、拡散に協力する体制ができ上がっている。

 マクドナルドはツイート数が多いため、リツイートも分散しがちだが、明治のキャンディー菓子「チェルシー」とコラボした「マックシェイクチェルシー」の告知ツイートには、4万件を超えるリツイートがあった。

レーダーチャート表示で強み(弱み)を可視化
レーダーチャート表示で強み(弱み)を可視化

 本誌9月号特集で、人に伝えたくなるネット広告動画の要素は「感動」「胸熱」であるという調査結果を紹介した。これを男女別にみると、感動コンテンツを伝えたくなる人は男性43%に対し女性55%に上る。女性の伝達意欲は旺盛だ。女性ウケしそうなチェルシーコラボシェイクのリツイート件数が突出したのも頷ける。

 最後のメディア関係力は、Webニュース記事の掲載や拡散には直接関係しない。だが、企業・ブランド名がマスメディアに登場する回数や頻度は、メディア側の人間の興味関心を反映している。自社の認知や存在感が底上げされれば、記事になりやすい環境、土壌が整うことになる。ここでもマクドナルドは強かった。

 次回は、メディア露出を高め、その露出を売り上げにつなげていくための工夫について考察する。

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