マネックス証券がWeb接客ツールを導入し、ニーズに合わせてサイトに表示するコンテンツを出し分ける取り組みで成果を上げている。

 具体的には、プレイド(東京都品川区)が提供するWeb接客ツール「KARTE(カルテ)」を使って、口座開設を検討中の「潜在顧客」や、口座は開設したもののまだ取引をしていない「初期顧客」に対して、それぞれの状態(ステータス)に応じてWebサイト上で示すコンテンツを出し分ける。口座開設を検討中の顧客には口座開設ページへ誘導したり、口座開設後に初めてログインする顧客には3ステップで入金方法を示したり、という具合だ。

口座開設後、初めてログインした顧客には、取引のために入金する方法を解説するコンテンツを表示する
口座開設後、初めてログインした顧客には、取引のために入金する方法を解説するコンテンツを表示する

 今年5月からコンテンツの出し分けを始め、顧客のその後の行動を検証して効果的なコンテンツに差し替えるといったPDCAを回し、出し分けの精度を引き上げていった。「情報はサイト上に十分すぎるほどあったが、必要とする顧客に適切に伝えられていなかった。Web接客ツールを使うことでその課題の解決を目指した」と取り組みを主導したマネックス証券マーケティング部の田中佑典氏は語る。

 その結果、8月7日から25日の期間を見ると、コンテンツの出し分けをした顧客は、出し分けをしなかった顧客に比べて、初回取引を始める割合が21.9%も高まった。

新規客にフレンドリーでなかった

 マネックス証券がWeb接客ツールを導入したのは、「従来のWebサイトは、初めて取引する顧客にフレンドリーでなかった」(田中氏)からだ。マネックス証券は、株式や債券、株式投信などにかかわる数多の情報をWebサイト上に掲載しているが、情報は顧客が自分で探さなくてはならない。これでは、株取引の“玄人”と初心者が、同じようにサイトを利活用できるとは言い難い。

 そこで、基幹システムを刷新し、Webサイトのリニューアルを終えた今年5月にKARTEを導入。口座を開設したが取引がなされていない初期顧客を主な対象に、まずは取引を始めてもらうことを目指して、既存のコンテンツを出し分ける精度を高めていった。

 例えば、入金しても実際に取引を始めない顧客に当初は、「どの銘柄を買えばよいか、分からないから」という仮説を立て、銘柄に関する情報を示したが、取引を始める顧客はそれほど増えなかった。そこで、サイト上の顧客の動きやKARTEで顧客から取ったアンケート結果などを分析した結果、「株式を買うタイミングが分からないから」と推測。投資のタイミングを指南するコンテンツを示すように改善したところ、取引を始める顧客が増えたという。

 今後もPDCAを回すことで、「実際に取引を始める割合を10%引き上げるという目標は、達成できる手応えがある」と田中氏は語る。そして、「初期顧客以外にもコンテンツを出し分け、取引の頻度を上げていく」(田中氏)考えだ。

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