1階エントランスから入って左手には、人間工学に基づいて設計されたアーロンチェアなどのオフィスチェア。奥に進むとシャンデリアコーナーがあり、マホガニー材を使った高級ダイニングテーブルや、革張りソファーなどが配置されている──。

 ここは大塚家具の新宿ショールーム。いや、実店舗を再現した店内疑似体験Webコンテンツ「IDC OTSUKA バーチャルショールーム」だ。パソコン、スマートフォン、タブレットから、実際に店内を歩いているような疑似体験ができる。

IDC OTSUKA バーチャルショールーム
IDC OTSUKA バーチャルショールーム

 今年8月10日にリニューアルし、本格稼働した。昨年8月から試験公開していた従来版は店内の様子を3Dで眺められるというものだった。リニューアルに当たってEC(電子商取引)サイト「IDC OTSUKA オンライン」と連動させ、購入まで完結できるようにした。

 店舗内の主要商品には小さなアイコンが表示され、それをタップ(クリック)すると商品紹介ウインドウがポップアップ表示される。さらに「商品詳細」を選ぶとECサイトに遷移する。Googleのストリートビューで店内を探索しているような操作感だ。

6時間かけて店内を撮影

 インドアのマッピングプラットフォームを開発するドイツのスタートアップ企業、NavVisの技術を採用。実作業は、NavVisと提携するソフトウエア開発会社、構造計画研究所(東京都中野区)に委託した。撮影には、建物内を高解像度パノラマで360度撮影できるカメラを三輪車型の撮影マシンに設置し、新宿ショールームの7フロア分、約1万1000m2の店舗空間を、営業時間外に計6時間かけて撮影したという。

 バーチャルショールームのリニューアルを率いた同社営業企画部次長の野口哲也氏は、「家具選びを検討中に当社サイトを訪れたお客様が、バーチャル店舗を体験することで来店意欲が高まったり、インテリア相談コーナーから問い合わせたりするきっかけになってほしい」と来店の足掛かりになることに期待を寄せる。

 かつては店員が来店客の要望を確認しながら店内を案内するのが同社の接客スタイルだったが、大塚久美子社長就任後は、気軽に入りやすい店作りを打ち出し、希望しなければ一人で見て回れるようになった。どこに何の家具があるか、来店前の下調べにバーチャルショールームは重宝しそうだ。他店の商品と比較した結果、同社商品の購入を決めた場合、再来店が面倒であれば、バーチャルショールーム上で売り場を確認しながらECサイトで購入する手もある。

 ほかにも同社は、AR(拡張現実)を使って自宅に指定の家具を置いたらどんなイメージになるか、家具の“試着”ができるアプリ「IDC OTSUKA AR」や、家具を置いた部屋のレイアウトをシミュレーションできるアプリ「IDC OTSUKA 3D」をリリースするなど、家具選びのデジタル支援に積極的だ。お家騒動後の業績はさえないが、店舗誘導と購入支援のデジタル化は着々と進めている。

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