衣料品から家庭用品、食品などさまざまな日常生活品を「無印良品」ブランドで展開する良品計画。中でも愛用者の思い入れが強い商品群として文房具のペンが挙げられる。色が豊富なゲルインキボールペンなど、無印良品のペンシリーズは、特にイラストを趣味とする愛好家、そして本業とするプロの間でもグローバルで評価が高い。

 Instagram上では、「#mujipen」または「#mujipens」のハッシュタグを付けて作品を公開する投稿が数千件に上っていた。この自然発生的な現象に目を付けた同社は、無印ペンで描いたアート作品の投稿企画「MUJI PEN ART CONTEST」を今年8~9月に開催した。

InstagramでMUJI PENコンテストを開催
InstagramでMUJI PENコンテストを開催

 コンテストを主導した同社WEB事業部長の川名常海氏は、「企業のプロモーションに協力してもらうのではなく、コンテストを通じて自身の作品がより多くの人の目に留まり、アーティストの方にとって新たな発見や刺激を得られる場となり、さらに創作意欲が高まる。そんな場作りをすることが目的」と企画の趣旨を説明する。

 8月15日から9月1日の応募期間に参加者は「#MUJIPENART」のハッシュタグを付けてInstagramに作品を投稿。9月5~16日にTwitterを通じて人気投票を実施した。最も投票が多かった作品に授与する「みんなの投票賞」のほか、「無印良品デザイナー賞」「ステーショナリー担当賞」の各賞を10月中に発表する。

締め切り後も応募が続く人気

 結果、アート作品の投稿は28カ国・地域の無印ペンユーザーから2500件と「当初予想の4倍近い」(川名氏)応募があった。9月1日の締切以降も応募用ハッシュ付きの投稿が続き、10月13日時点で3500件を超えている。

 参加国は、米国、カナダ、イギリス、タイ、韓国、インドネシアなど28カ国・地域に上った。同社が海外で実店舗を展開している国・地域とだいたい一致する。ただし160店舗を展開する中国はSNS規制の影響で応募がなく、一方、南アフリカなど店舗がない国からの応募もあった。

 コンテストの運営は、対話型マーケティングを手がけるイーライフ(東京都渋谷区)が支援した。イーライフは、顧客からの商品アイデアや改良リクエストとその進捗を公開する無印良品の共創型コミュニティー「IDEA PARK」の運営サポートも手がけており、その過程で無印ペンのInstagram上の盛り上がりに着目し、コンテスト開催を進言した。

 コンテストのプラットフォームとして活用したのが、イーライフが今夏に業務提携した米ウェインが提供するSNSキャンペーンプラットフォーム「Wayin」。投稿作品の掲示や投票機能などSNS連動型キャンペーンのテンプレートを持ち、複数のSNS投稿を横断的に分析できる。Wayinを活用することで、7月上旬に持ち上がった企画が8月の盆明けから投稿受付開始というスピードで実現し、参加国・地域数も、投稿元を Wayinが解析して割り出した。

 投稿が多かった国トップ3は、米国、イギリス、シンガポールの順。本家の日本は4位というグローバルなコンテストだった。他業種でも世界で愛用されている日本発の商品はあるはず。愛用者の自発的な活動を後押しする形で関与することが成功をもたらしそうだ。

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