ヘアケア商品を使って、傷みを受けにくい髪になるように事前に予防する──。競合商品にはあまり見られないこの「予防美髪」というコンセプトを掲げるのが、クラシエホームプロダクツ(クラシエHP、東京都港区)が手がけるヘアケアブランド「いち髪」である。

クラシエHPは、この予防美髪といういち髪のコンセプトを、ターゲットであるF1層(20~34歳までの女性)を中心に、幅広く知ってもらうためのWebキャンペーンを8月3日から末日まで展開し、想定していた以上の成果を上げた。
Webキャンペーンの中身はこんな具合だ。ホウキやロープ、納豆など「髪の毛と似て非なるもの」の画像を、傷んだ髪の毛の画像とそれぞれ1対1で比較し、傷んだ髪の毛ではないほうを選んでもらうというクイズを5問、特設サイトに用意。そのうえで、Twitterユーザーに幅広く配信する広告の1つ、「プロモツイート」を活用して、クイズに用いた比較画像を広告クリエイティブとして展開した。画像を見たユーザーを特設サイトに誘導し、クイズに回答してもらった。
サイト訪問者は、FacebookかTwitterアカウントでログインした後、クイズに回答。するとクイズの正解が示されるとともに、傷んだ髪との比較対象がタワシであれば摩擦に対する注意、納豆であれば食生活に対する注意など、クイズの内容に応じて、日ごろのヘアケアに対するアドバイスをコンテンツとして表示した。サイト訪問者は、傷んだ髪がどれほどひどい状態にあるかを理解し、予防に役立つというアドバイスに登場するいち髪へのイメージが自然に向上するという仕掛けだ。
キャンペーンでは、プロモツイートで配信した複数の広告クリエイティブに対するCTR(クリック率)などを見て、クリエイティブを差し替えたり、配信先のターゲティングを細かく変えたりした。その結果、通常ならば0.3%程度のCTRが10倍以上の平均約3%になった。プロモツイートをリツイートしたり、いいねを押したりしたユーザーの割合を示すエンゲージメント率も、これまでのいち髪のキャンペーンに比べて約3倍になった。「想定以上の成果。いち髪の認知を広げ、傷んだ髪になる前に予防するという特徴を知ってもらい、イメージを引き上げるという目的は達成できた」とクラシエHP宣伝・販促部の牧戸和至部長は胸を張る。
「全問正解は現役東大生100人中1人」
今回のキャンペーンが成功した理由は、傷んだ髪の毛と似て非なるものを比較した画像のインパクトが大きかったことにある。ヘアケア製品のキャンペーンでは美しくなった髪を見せることに注力するのが一般的。傷んだ髪の毛を見せるという立て付けは、多くはない。
だが今回は傷んだ髪の毛の画像をユーザーに見せて、髪の毛の予防の重要性に気付かせることに注力したことが結果につながった。
クイズもかなりの難易度に設定した。事前に東京大学の学生に回答してもらったところ、5問全問正解は100人中1人だったという。プロモツイートや特設サイト上で「全問正解は現役東大生100人中1人のみ!」と、難しさをアピールした。「不正解だったユーザーが、ネット上で『こんなクイズ、解けない!』と反応してくれたほうが、より話題になると考えた」と牧戸氏。
クラシエHPは今回の成果を踏まえ、主要小売店がヘアケア商品の棚替えをする来春に向けて、いち髪の次のブランディング施策を検討しているところ。「ユーザーにさらに驚きを与え、いち髪のブランディングにつながる策を展開したい」と牧戸氏は語る。