「迅速に対応していただき、大変助かりました。また、電話でいろいろ質問した際、分かりやすく教えていただきました」「安い保険料への変更を考え、いろいろ調べてみました。内容が分かりやすいこと、返事が早いことで☆5です」──。

 アクサダイレクト生命保険(東京都千代田区)は今年6月、「お客さまからの評価」の公開を始めた。商品・サービスの格付け・評価を調査、管理する第三者機関「eKomi」と契約し、eKomiサイト上の自社評価ページに、自社サイトトップページからリンクを張っている。国内の保険業界では初の取り組み。他業界でも、価格.comや楽天トラベルなどで評価対象になっている商品・サービスはあるものの、自社サイトに載せたり、リンクを張ったりする例は珍しい。

「5つ星評価が続くと、『高評価だけ選んで掲載している』と思われないか逆に心配になるほど」と上田氏

 冒頭のコメントは、実際にeKomiのサイトに載っている契約者の投稿だ。新規契約や保険金・給付金の受け取りといった手続きが発生した顧客に、eKomiから評価を依頼するメールを送り、顧客は満足度について5つ星評価と感想をフィードバックする。現状、評価依頼に対し1割弱から回答があるという。

 投稿内容は、個人名などが特定できる場合だけ当該箇所にアスタリスクを入れるだけで、評価も投稿内容も操作は一切できない。eKomiから上がってきた顧客レビューに、同社お客様相談室からのコメントを添えて、公開する。「お褒めいただき光栄でございます。高評価をいただき大変嬉しく思います。よりご満足いただける対応を目指したいと思っておりますので、よろしくお願いいたします」といった具合だ。

厳しい声にも内容に合わせて誠実に対応

 むろん、厳しい声もある。「給付金の振り込みが遅い」「電話対応がやや機械的な返答だと感じた」「申し込みが複雑すぎる」など。希望した保険に加入できなかった人からは、その恨みつらみが書かれることもある。それらに対しても、「お手続きに時間がかかったとのこと、大変申し訳ございませんでした」「引き受け判断はお客さまに告知(ご入力)いただいた内容に基づき、総合的に行わせていただいており~」など、一律の“コピペ”対応ではなく、内容に合わせて、詫びるところは詫び、説明すべきところは説明をしている。

 自社評価の情報公開に踏み切った理由について、同社ダイレクトマーケティング部部長の上田哲也氏は次のように語る。「お客様のパートナーでありたい。常に一歩先を行くアクサでありたい。自社ブランドのあり方について考えたとき、積極的な情報公開によってご契約の納得度を高めること、お客さまからの声に迅速に対応して商品・サービスの質を上げていくことが重要になる」。

 eKomiの評価システムを利用した情報公開は、昨年から本国で試験的に導入していたが、導入指令があったわけではないという。それでも、同社のほかアクサ生命(東京都港区)、アクサ損害保険(東京都台東区)もそろって各社の判断で今年4~6月に順次導入した。世界64カ国に営業拠点を持つアクサグループで、導入済みはまだ8カ国だという。

 レビューは標準では新しい順に並んでいるが、評価の高い順・低い順にソートして閲覧することもできる。低い順にソートすれば当然厳しいコメントが並ぶが、それでもレビュー総数874件の総合評価は5点満点で4.4点(10月9日時点)。特に契約時のレビュー(682件)が4.3点であるのに対し、保険金・給付金受け取り時のレビュー(192件)が4.7点と高いことに、上田氏は「導入してよかった」と自信を深めている。

 先日公開した記事「業界平均NPS、トップは高級ホテル、下位はISPと金融」の通り、金融は他業界と比べて厳しい声が集まりやすい。それでも、一部のネガティブな反響を恐れず情報公開や透明性の確保に取り組むことが、信頼の獲得につながることを、アクサ3社の取り組みは示している。

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