プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン(P&G)は、アスクルとヤフーが共同運営するEC(電子商取引)サイト「LOHACO」とのデータ連携を開始する。会員370万人を擁するP&Gのコミュニティーサイト「マイレピ」のロイヤリティープログラムなどを10月にリニューアル。10月30日以降、マイレピ会員がLOHACO上で「Yahoo! JAPAN ID」を登録した後、同サイトでP&G商品を購入すると、マイレピのポイント「マイレピポイント」と「Tポイント」とを両方取得できるようにして、IDのひも付けを加速する。

P&Gはコミュニティーサイト「マイレピ」と「LOHACO」とのデータ連携を開始
P&Gはコミュニティーサイト「マイレピ」と「LOHACO」とのデータ連携を開始
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 2サイトのデータ連携を可能にするこの施策により、マイレピ会員がどのような商品に興味関心を持っているかを、LOHACO上の行動などから把握。さらにLOHACOでP&G商品を購入した会員と、属性やネット上の行動が近い人をターゲティングするなど、打ち手の幅が大きく広がる。

 P&Gがマイレピを開設したのは2010年10月のこと(今年7月までは「Myレシピ.com」)。目的の1つは、テレビCMなどのマス型が中心だったマーケティングから、Myレシピというオウンドメディアをも駆使した施策へと、マーケティング展開の幅を拡大すること。もう1つは、ヘアケアブランド「パンテーン」や消臭剤・芳香剤ブランド「ファブリーズ」といった個別ブランドの枠を超えたマルチブランドでターゲットデータを共有。CRM(顧客関係管理)やネット広告出稿などに活用することだ。

CTRが150%高いケースも

 P&Gは、パンテーンなら美容に興味関心が強い女性、ファブリーズは部屋の中のさまざまなニオイに敏感な人などと、ブランドごとにペルソナを明確に描いてマーケティングを展開している。しかし複数ブランドのペルソナが、同じ1人の消費者に当てはまることも少なくない。ブランド単位のマーケティングはコスト・効率性の両面で課題があった。実際、「Myレシピ開設前は、現在よりも3倍も多い予算で各ブランドがマーケティングを実施していた」。マイレピ運営責任者であるブランド・マネジメントアソシエイトディレクター ブランド・オペレーションズリーダーの松浦香織氏は明かす。

 開設から5年でマイレピ会員数は370万人に増え、年間UU(ユニークユーザー数)は1400万、同PV(ページビュー)は6100万まで拡大した。「PVとUUの差から、会員登録はしていなくともマイレピを定期的に訪問・閲覧しているP&Gファンは多いし、年々増えている」(松浦氏)。こうした潜在ファン層の取り込みを加速することも、LOHACOとの連携の狙いの1つだ。

 並行してマイレピでのコンテンツマーケティングも強化する。マイレピではライフスタイル、ヘルスケア、美容・ファッション、料理のヒントといった切り口でオリジナル記事を配信。P&Gの23の商品・ブランドやキャンペーンの情報も掲載している。このうちキャンペーン告知バナーなどについては、マイレピ内に出稿した場合と、外部サイトへの出稿とを、例えばCTR(クリック率)で比較すると、マイレピ内の方が平均して30%ほど高いという。中には150%増になった例もある。「会員のP&Gに対するロイヤルティーが高いことが要因の1つ」(松浦氏)。そこでデータでターゲティングする施策だけにこだわらず、マイレピ活用をさらに進める。具体的にはコンテンツ拡充でキャンペーン参加率を高めることなどで、マイレピのKPI(重要業績評価指標)の1つであるサイト経由の売り上げを拡大していく考えだ。