「109」ブランドで商業施設を展開する東急モールズデベロップメントは10月9日、同ブランドのEC(電子商取引)サイト「SHIBUYA109 NET SHOP」を刷新する。刷新に当たって、これまで別々になっていた各商業施設ごとのWebサイトとECサイトを統合する。さらに一部のメーカーとは、メーカー直販サイトとSHIBUYA109 NET SHOPで商品情報と在庫情報を連携させる取り組みを始める。これにより取り扱う商品数を大幅に増加させる。

刷新されるECサイト「SHIBUYA109 NET SHOP」(画面は開発中のもの)
刷新されるECサイト「SHIBUYA109 NET SHOP」(画面は開発中のもの)

 「SHIBUYA109」といえば、90年代から2000年初頭にかけて、若者文化の象徴の1つとして脚光を浴びた商業施設だ。しかし、消費者のファッションに対する嗜好の多様化、新たな商業施設やファストファッションの台頭などによって、「2008年を境に、苦戦を強いられている」(SHIBUYA109事業本部ブランド戦略室の中里研二ブランド統括部長)。

 さらに、「ZOZOTOWN」を筆頭とする、ネット通販市場の隆盛も競争環境の激化につながった。ネット通販という新たな市場の登場によって競争環境が変化する一方で、109のネット対応は後手に回ってしまっていた。「ECサイト自体はかなり早い時期から展開していたものの、方向性や役割が明確ではなかった。商業施設のサイトとも連携が取れておらず、十分に活用しきれていなかった」(経営企画本部ICT戦略部の沢辺亮シニアマネージャー)。

 こうした課題の解決に向けて、109ブランドを訴求する戦略を改めて打ち立てた。狙う施策は4つあるが、ECの強化は、そのうちの「Webコミュニケーションでブランドの世界観を体現する」「マーケティングCRMを強化する」の2つの実現において重責を担う。「リアルとネットの両方でブランドの世界観を体現していく」(中里氏)ために、これまでバラバラに動いていたブランド統括部とICT戦略部が手を組み、「ECプロジェクト」と銘打って共にECの強化に乗り出した。

コンテンツを動的に入れ替え

 新たなサイトでは商業施設のサイトとECサイトを融合することで、訪問者には多角的に109ブランドのコンテンツに触れてもらうことを狙う。従来は、例えば「静岡109 ブランド名」などで検索した場合、静岡店のWebサイトに掲載されている該当ページに誘導していた。ところが、掲載されているコンテンツは店内の写真程度のみ。仮に、ECサイト上の商品ページなどに誘導できていれば購買につながった可能性もある。新サイトではこうした課題の解決を目指す。

 取り扱うブランドごとのページを新たに開設して、そこに各店舗とECサイト上の商品情報などを集約する。さらに、利用者の導線に合わせて、表示する情報を動的に入れ替える仕組みも導入する。先程の例で言えば、静岡店の情報を探してサイト訪問した人がブランドページを訪れた場合には、静岡店の入荷情報などがページの上部に表示される。もちろん、同じページ内にはECサイトの情報も掲載されているため、そこからネット通販を利用することもできる。こうして、利用者のニーズに合わせて店舗やECサイトの情報を提供することで、体験価値を向上する。

 また、リアル店舗で働く店員のコーディネート写真やインタビュー記事を掲載することで、コンテンツの強化を狙う。「かつてはカリスマ店員と呼ばれて大きな影響力を発揮したこともある。店員は109にとって重要な資産のため、ネット上にも店員が活躍できる場を設ける」(沢辺氏)。

 在庫の強化では、一部の取り扱いブランドの直販サイトと在庫情報を連携する。これによりブランドの直販サイトで販売が始まると同時に、SHIBUYA109 NET SHOPにも同じ商品が掲載され、販売されることになる。この仕組みの導入で「在庫情報を共有するブランドについては、取り扱う商品数が10倍以上に増える」(沢辺氏)。刷新当初は20ブランドのサイトと連携する。今後、提携ブランドをさらに増加させていく計画だ。

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