墓石の販売を手がける良心石材(千葉県香取市)は位置情報とAR(拡張現実)技術を利用し、墓参した際などに故人からのメッセージを、その場でスマートフォンやタブレットから閲覧できる専用アプリを協力会社と2年がかりで開発。同アプリを利用した「Spot message(スポットメッセージ)」というサービスを8月15日に開始した。

墓の周辺の風景の中に自然に人が現れるARコンテンツの形で、メッセージを残せる「スポットメッセージ」
墓の周辺の風景の中に自然に人が現れるARコンテンツの形で、メッセージを残せる「スポットメッセージ」

 消費者が墓を建てようとするときは、寺や霊園から紹介を受けたり、自分で調べたりして、数多い墓石業者の中から1社を選んで墓石を購入するケースが多い。そこで良心石材は、「墓の場所や思い出の場所を指定したうえで、故人からのメッセージを親類縁者その他の方々に届けられる」(良心石材代表取締役の香取良幸氏)という新しいサービスを用意することで知名度を高め、墓石購入先として選択してもらうことを狙った。

 自分が亡くなったときに備えてメッセージを残したいという人は、そのための動画や写真を用意して良心石材に預け、ARコンテンツに加工してもらう。遺族らが、故人が眠る墓などでアプリを立ち上げると、画面を通して故人がメッセージを話す様子などを見ることができる。

 ARコンテンツを表示したい場所と、メッセージを見てほしい人のメールアドレスは事前にアプリから登録しておく。すると登録された家族や友人などにメールが届き、案内に従って専用アプリをダウンロードしてもらう仕組みだ。

 家族らがアプリを起動し、指定のスポットに近づくと、「あと○○m」などと表示が出て、誘導される。スポットまで20m以内の場所でアプリ上の「メッセージを見る」ボタンを押すと、風景をバックに、本人のメッセージが再生されるといった使い方になる。

 サービスの利用には原則、初期登録料500円と月額使用料500円、ARコンテンツを1つ登録するたびに1000円が必要。メッセージを残したい人やその家族などが月額使用料を払っている間は、故人のメッセージが再生できる。

 ARコンテンツが利用できることを前面に打ち出しているが、実は通常の動画や写真をメッセージとして残すこともできる。専用アプリ上から良心石材のサーバーにアップロードすれば、ARコンテンツと同様に、位置情報と連動してメッセージが再生される。メッセージの保存期間は2カ月で、宛先も最大10件までとなるが、利用料は原則無料になる。

Jリーグなど、墓参以外の市場も開拓

 滑り出しは、良心石材の予想を上回る。8月15日のサービス開始後、テレビなどのメディアがいわゆる“面白アプリ”の1つとして専用アプリを紹介したことも大きかった。専用アプリの認知が高まり、「ARコンテンツの形でお墓にメッセージを残したい、良心石材から墓石を買って墓を建てたいという消費者が増えた」(香取氏)。本拠地である千葉周辺に加えて北海道からも、墓石とサービス利用の注文が来ているという。おかげで同社の9月の売上高は、「前年同月比で25%増になった」(香取氏)。

 好調な出足を受け、良心石材は今後、スポットメッセージを、墓関連以外の用途にも展開していく腹づもりだ。アプリの認知度を向上させて墓石販売に結びつけるのに加え、アプリを軸としたメッセージサービスを新規事業として育てることを狙う。

 第1弾として、明治安田生命Jリーグ(J2リーグ)に属するカターレ富山と契約し、9月25日に催された大分トリニータ戦で、スポットメッセージを活用したファンと選手の交流を実現させた。来場したカターレ富山のサポーターがスタジアム内で専用アプリを立ち上げ、指定スポットに近づくと、ARコンテンツとなった選手がアプリ内に現れ、「来てくれてありがとう」といったメッセージを発信する。来場者はアプリ内でARコンテンツ化された選手と一緒に並んでいる写真を撮影し、保存することもできる。

 「年内にスポットメッセージの販売代理店を募り、さらに用途開拓を進める計画」(香取氏)で、専用アプリの改良も進める。なお、現在はAndroid版のみで、10月中にはiOS版アプリもリリースする予定だ。