セブン&アイ・ホールディングスは、同グループのオムニチャネル戦略の中核となるグループ統合型EC(電子商取引)サイト「omni7(オムニセブン)」を11月1日に本格稼働させるに当たり、10月より同サイトの試験運用を開始する。
omni7は、セブン-イレブンやそごう・西武、イトーヨーカドー、赤ちゃん本舗、ロフトなど、セブン&アイグループの各企業が扱う商品を横断的に販売するECサイトとなる。グループが連携して開発するオリジナル商品も増やしながら、2018年度には約600万品目の品ぞろえと、omni7を通じて1兆円のEC売上高を目指していく。

これまでも同グループはECサイト「セブンネットショッピング」でグループ企業の商品をネット販売してきており、その売上高は2015年度に2000億円を見込んでいる。そごう・西武や赤ちゃん本舗などの一部の商品は、セブン-イレブン店舗で受け取れるサービスを展開していたが、これまでは各社がそれぞれのECサイトを「バラバラにやっていた状態だった」とセブン&アイ・ホールディングスの鈴木康弘・取締役執行役員最高情報責任者(CIO)は話す。
今回、omni7のスタートに合わせて、物流やECのシステム、サーバーを管理するデータセンター、顧客や商品データベースを統一。さらにコールセンターを共有化するなど、「目に見えない部分の仕組みを一本化した。これにより、今後のサービス拡充のためにできることが大きく広がった」と鈴木氏は話す。その分かりやすい例が、食品や本など一部の商品を除いて、omni7で取り扱う商品すべてをセブン-イレブンの店舗で返品・返金可能にすることだ。
棚と商品が、無限に増える
情報システムや物流などのバックエンドだけではなく、顧客接点となるフロントエンドのサービスの改善も併せて実施している。例えば店舗での受け渡しサービスについては、店舗のカウンター棚を改造したり店舗の倉庫の配置を工夫したりするなどして、注文から60秒以内に商品の受け渡しができる活動などを、各店舗が実施。サービス品質の向上活動を展開していた。こうして品ぞろえから受け渡しまで、サービスのあらゆる使い勝手を細部まで検証し、改良することで、「1日に2000万人が利用するセブン-イレブンの店舗の棚と商品が、ネットによって無限に増える。顧客にそんなイメージを抱いてもらえるようなサービス」(鈴木氏)を可能にする基盤が整った。
表からは見えない改革は、コールセンターや、コスト削減のための段ボール箱の見直しにも及んでいる。これまでは各企業がそれぞれ問い合わせ窓口を設けてきたが、これを一元化する。例えば「そごう・西武の商品について問い合わせをしたついでに、赤ちゃん本舗についても質問できる」(鈴木氏)というような、柔軟な対応が可能になる。「目指すのは、自動応答システムを使って顧客を待たせるようなサービスとは一線を画した対応。店舗で商品について尋ねるくらいの気軽さで、連絡できるコールセンターにしていく」と鈴木氏は言う。
段ボール箱も各企業が個別に作っていたため、全部で30種類以上の箱があった。これを柄を含めて統一し、種類を半分にまで圧縮。その調達にかかる費用を削減した。
omni7では、Webサイトのデザインの統一感や視認性も向上させている。同サイト上で使うロゴ、梱包用の段ボール箱、グループで共同開発する新しい商品などのデザインをするのが、デザイン会社「nendo」の佐藤オオキ氏だ。同氏は建築家出身で、世界で300近いプロジェクトを抱える人気デザイナー。これまではプロダクトを中心に活動してきており、建築やプロダクト系のデザイナーがクリエイティブディレクターとして、WebサイトやCI(コーポレートアイデンティティー)のデザインまでを手掛ける例は珍しい。
今回、セブン&アイはグループ各企業の利害調整や企業間の意思統一などを行う際にもnendoのデザイナーを同行させ、グループビジョンの策定などさまざまな場面でもデザインを活用したと言う。「(そうした作業の際に)必要だったのは、理詰めで誰もが納得できるデザインだ。理系の建築出身の佐藤氏の提案するアイデアやデザインは明快な説明がしやすく、合意形成に役立った。また佐藤氏は関係者の意見にじっくりと耳を傾け、多くの人が納得できるような解決策を出す能力に優れていた」(鈴木氏)点が、起用した理由だと言う。今後佐藤氏は、セブン&アイグループの新商品開発や、店舗設計なども手掛けていく。