業界の顔とも言える有力デジタルマーケターが、新たな活躍の場を求めて相次ぎ転職をした。花王デジタルマーケティングセンターデジタルトレード室長の本間充氏と良品計画WEB事業部部長の奥谷孝司氏は10月から新たな会社へ籍を移す。インターネットが普及して約20年、専門職としてキャリアを積んできたデジタルマーケターのキャリアパスの先例として注目される。

 本間氏は10月1日、経営コンサルティングのアビームコンサルティングに入社し、デジタル技術を活用して企業の業務改革、事業モデルの変革を支援するアビームデジタルのチームに加わる。

 本間氏は「入社当時から55歳ぐらいでアーリーリタイアし、その後は教育や後進育成の活動をしたいと考えていた。その上で、1社しか知らないより複数の会社を知った方がいい。事業会社では花王と同じになる。そこでコンサルティング会社への転職を決めた」と明かす。

 その上で、「アビームは日本型のコンサルティングファームであり、日本企業の良さを残しつつデジタルでの変革を実現するという成功事例を作りたい」と抱負を語る。

 本間氏は2011年1月から日本アドバタイザーズ協会Web広告研究会(WAB)の代表幹事も務めてきたが、花王の退社に合わせて9月23日、代表幹事の退任と退会をWAB内の会合で表明。WABは12月までに次の代表を決定する予定だ。

 本間氏は1992年に花王に入社して、1996年まで研究所に勤務。1999年からWeb専門部署でデジタルマーケティングに取り組み続けてきた。直近ではデジタルトレード室で同社のEC(電子商取引)事業にかかわってきた。東京大学大学院数理科学研究科で客員教授も務める。

奥谷氏はオイシックスのオムニチャネル責任者

 良品計画の奥谷氏は10月中旬、食材ネット宅配のオイシックスの統合マーケティング室室長COCO(Chief Omni-Channel Officer)に就任する。同社はEC事業に加えて、店舗事業として、東急ストア、三越伊勢丹内などに16店舗を構え販売をしている。2015年4-6月期の店舗売上高は前年同期比72%増になったと公表している。

 奥谷氏は1997年1月に良品計画に入社し、2005年に衣服・雑貨部へ異動し、服飾雑貨のカテゴリーマネージャーとして、かかとの角度が90度の「足なり直角靴下」の開発を担当。2010年2月よりWEB事業部長に就任した。店舗チェックイン機能などを備えたオムニチャネル対応のスマートフォンアプリ「MUJI passport」を開発し、2015年1月末までに330万ダウンロードを達成。海外版も展開している。

 なお、オイシックスには、化粧品製造・販売のドクターシーラボのeコマースグループグループ長として、長年にわたりEC事業を統括してきた西井敏恭氏が、2014年7月から執行役員CMO(最高マーケティング責任者)に就任している。

 セブン&アイ・ホールディングスに代表されるように流通各社はオムニチャネル戦略に力を入れる。こうしたEC事業責任者の転進は、そのキャリアの市場価値が高まっているとみることもできるだろう。

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