OA機器や通信回線などの卸売り販売を主力とする光通信が、米国からインターンを募集するために制作したネット動画広告で、予想以上の成果を上げた。今年3月から約1カ月間、「YouTube」のTrueview広告を使って、米国内で2種類のネット動画広告を配信したところ、期間中の米国での「Hikari Tsushin」の検索数が、配信前に比べて約27倍に急増。米国からのインターン応募数も、「目標の143%に達した」(光通信管理本部戦略企画部統轄部長の大嶋敏也氏)という。

 光通信の動画広告が米国で注目を集めた大きな理由は、その内容にある。1つは、インターンを募集するためにどのような動画を制作すべきか、若い社員たちが社内のきれいな会議室で議論する様子を見せて、自由闊達な社内の雰囲気を伝えることに主眼を置いた2分弱のAバージョン。もう1つは、光通信がどんな会社かを、複数の社員自身に語らせた1分30秒強のBバージョン。特に効果的だったのはBバージョンだった。

 Bバージョンは、冒頭にインド系の若い社員が登場し、「1年前に日本に来た時、僕は日本語が全くできませんでした」と日本語で語りかけ、続けて「Now I’m a Manager」と英語で話す。その後、テーマ音楽とともに「Make your move」「Hikari Tsushin」の文字が画面いっぱいに広がる。日本語を話せない若い外国人が来日1年で日本語を流暢に話し、加えて10人の部下を持つマネジャーとして活躍している──。「応募してきた方たちにヒアリングしたところ、この出だしのインパクトが絶大だったようだ」と大嶋氏は語る。

光通信が米国で配信したネット動画広告のBバージョン。インド系社員が冒頭に登場し、「I’m a Manager」と話す
光通信が米国で配信したネット動画広告のBバージョン。インド系社員が冒頭に登場し、「I’m a Manager」と話す

 これは、大嶋氏が「冒頭の5秒が勝負。ここで動画広告を視聴する人に光通信とはどんな会社か刷り込んでほしい」とクリエイターに強く注文し、出てきたアイデア。ほかにも、「米国で教育を受けていることが重要で、相手は米国人でも日本人でもよい」「日本企業だと分かるように、一目で分かる日本の要素を入れてほしい」など、動画制作に当たって重視しているポイントを実際の動画制作の前に細かく説明し、採り入れてもらった。
 
 もともと光通信は社内に動画を制作する部署を持っている。しかし、今回は、「内製するには制作期間が短すぎた」(大嶋氏)ため、映像制作支援会社Viibar(東京都目黒区)に制作を依頼。普段から動画の中身に注文を付けている経験を生かし、Viibarのコンペに参加したクリエイターにも、いつも通りに何を重視しているか示し、良いアイデアを引き出した。

学生に直接アプローチ

 光通信が米国での社員採用に力を入れ始めたのは、日本の合同企業説明会に相当する「ボストン・キャリア・フォーラム」に、4年前に出展したのがきっかけだ。背景には、「日本の大学出身の学生を採用しても、思い切ったチャレンジを貴ぶ当社の社風になじまないケースが多かった」(大嶋氏)という悩みがあった。そこで実験的に同フォーラムに出展して海外の大学の出身者を採用してみたところ、思った以上に社風になじんだという。

 しかし、同フォーラムへの出展や、海外での「キャンパスリクルーティング」だけでは、「日本で、それも光通信のような企業で働きたいと希望する学生に出会える確率が低く、採用活動としては効率が悪い」(大嶋氏)。そこで、日本に興味があり、かつ光通信のような挑戦を尊重する会社で働きたいと考える学生に直接アプローチするため、今年初めて、米国向けにネット動画広告を配信することにした。

 その効果は「予想以上」(大嶋氏)だった。冒頭で示したように、インターンの応募者数が目標の143%に達し、応募者の質も向上した。光通信が「ここからぜひ欲しい」と名前を挙げていた12~13の米有名大学からの応募者が、全体の51%に達した。その質も「とてつもなく高かった」(大嶋氏)。期間中に億円単位のビジネスを軌道に乗せたインターンがいたり、インターンの知り合いの起業家と光通信の間で実際のビジネスの話が進んだりといったケースもあったという。

 「インターンを全員採用できるかは分からないが、多くは帰国後に、『光通信はよい会社だ』と周辺に話してくれており、採用における光通信のブランディングにも貢献できている」と大嶋氏。今後も、ネット動画広告などを今以上に活用して、米国での採用活動を強化する腹づもりだ。