大東文化大学が、入学志願者の増加に力を入れている。2018年4月に、スポーツ・健康科学部看護学科、文学部歴史文化学科、社会学部社会学科と、13年ぶりに学科を、それも3つ同時に新設するため、新設学科の頭文字K、R、Sを取って、「大東文化大学に『カ・レ・シ』ができます。」という標語で昨年からアピールしてきた。

大東文化大学のWebサイト
大東文化大学のWebサイト

 今年正月の箱根駅伝(東京箱根間往復大学駅伝競走)の中継時には、「カ・レ・シ」をアピールするテレビCMの放映を開始。同時に、その素材を活用した5秒の動画広告をYouTube上に配信した。すると、大学のWebサイト上に配置していた、カ・レ・シの内容や大学の特色を伝える動画コンテンツの視聴回数が、「それまでの1000回程度から、テレビCMとネット動画広告を始めた後に、累計40万回まで一気に跳ね上がった」(入試広報部入試広報課の河崎隆通氏)のである。

 テレビCMとネット動画の力で、新設学科についての情報は想定以上に広く認知された。しかし、学科新設は2018年4月と先である。そこで大東大は、学科新設より2年早い2016年春入試から、紙による出願を廃してネット出願に1本化し、同時に併願割引も導入して、受験生にアピールを図った。特に併願割引は、同一入試区分内で2つの学科を併願する場合、2つ目の入学検定料を無料とし、異なる入試区分でも2つ以上併願した場合は割引を設定するというもの。センター利用入試でのセット割引はよく見られるが、一般入試で1学科分の入学検定料で2学科の受験を可能にする制度は、大規模総合大学では例がない。

今年春入試の志願者数35%増

 将来の学科新設、画期的な併願割引の導入、それに今年からのネット上の動画コンテンツの活用などが相まって、今年春入試の大東大の志願者数は急増。前年度比35%増の2万4002人に達した。この伸び率は、首都圏の4年制総合大学ではトップの数値だ。

 今年春は受験生が受験する学科数を増やす傾向にあったとはいえ、20年間2万人を超えなかった大東大の志願者数があっさり2万4000人を超えた背景には、学科新設や併願割引導入の影響はもちろん、ネットの力も大きい──。こう考えた大東大は、今年もネットの力を活用しようと、オープンキャンパスの運営にかかわる学生ボランティアとともに議論を重ねた。その結果、出てきたのがインフルエンサーの活用、それも動画投稿だけでなくリアルなイベントにも登壇してもらい、来場者などにその事実を発信してもらって、さらに拡散を図るという策である。 

 具体的にはこんなやり方を採った。まず、起用した人気YouTuberのMasuoさんに、今年7月16日に東京・板橋キャンパスで開催されたオープンキャンパスに来てもらい、学内を探訪する模様をMasuoさん自身のアカウントから動画で発信してもらった。YouTube上のMasuoTVに投稿された動画は再生回数約7万回に達し、大学に関する情報は、「Masuoさんのフォロワーを中心に広く拡散した」(河崎氏)。

トークショー開催を告知したオープンキャンパスのプログラム
トークショー開催を告知したオープンキャンパスのプログラム

 次いで、8月18日に埼玉・東松山キャンパスで開くオープンキャンパスでMasuoさん自身のトークショーが予定されていることを事前に告知した。フォロワー約36万人を抱えるMasuoさんのTwitterアカウントや、大学のソーシャルメディア公式アカウント、Webサイト、印刷メディアなどを使って、Masuoさんだけでなく人気インフルエンサーの佐々木あさひさんも一緒に登壇することを、広く発信したのだ。

 その結果、8月18日のMasuoさんのトークショーには多数の聴衆が詰めかけ、8月までに開催したオープンキャンパスの来場者数も、前年度を上回った。「これまで年間の来場者数が1万人を超えたことはなかったのに、この先に予定されているイベントを含め、今年は来場者数の1万人超えが見えてきた」(河崎氏)。来場者数という量だけではない。「インフルエンサーを活用したことで、来場した高校生たちに、大東文化大学をより身近に感じてもらえ、より深く興味を持ってもらえたと考えている」と入試広報部入試広報課の庄司辰也主査は強調する。

 狙いは当たっているようだ。オープンキャンパスの集客が増えただけでなく、大学受験生を対象に予備校が実施する各種模試においても、「希望先として大東大を記入する受験生の数は、昨年より増えている」(庄司氏)という。

 大東大では現在、「Daito Education Plus」という学生リーダー養成プログラムを準備中。今後は新設学科や既存学科のカリキュラムの底上げ、こうした新規プログラムの導入、それにラグビーや駅伝、スキー、スケートといったスポーツ活動の活性化などで大学の魅力をさらに高め、志願者数という数の増加だけでなく、志願者の質の向上も目指す。「『大東亜帝国』とくくられて呼ばれる大学グループのイメージに縛られない、独自の存在感を示していきたい」と河崎氏は語る。

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