「(広告主側からは)見えにくいため、レポートの改ざんはやろうと思えば、確かにできる。しかし、それをやるかどうかは企業体質による。本件をもって、デジタル広告はそういうものだというイメージが広がってしまうと、真面目に取り組んでいる中小企業はたまったもんじゃない」

 ある広告関係者はこう憤る。その怒りの矛先は電通だ。同社は9月23日、電通およびグループ会社の一部が、運用型デジタル広告の運用支援サービスにおいて、故意または人為的なミスなどの不適切業務により、その実績に関して虚偽の報告が含まれ、広告主に対して過剰な請求が行われていたと発表した。対象のグループ会社はサイバー・コミュニケーションズ(cci)、DAサーチ&リンク、現在は電通デジタルに吸収合併されたネクステッジ電通の3社。

左から、会見でお詫びする電通の河南周作広報部長、中本祥一副社長、山本敏博常務、榑谷典洋デジタルプラットフォームセンター局長
左から、会見でお詫びする電通の河南周作広報部長、中本祥一副社長、山本敏博常務、榑谷典洋デジタルプラットフォームセンター局長

 これを受け、電通は23日に東京都内で記者会見を実施。電通の中本祥一副社長は、「国内におけるデジタル広告において、広告主はじめ、関係各位に多大なご迷惑をおかけしたことを深くお詫びします」と述べ、山本敏博常務、榑谷典洋デジタルプラットフォームセンター局長と共に深々と頭を下げた。

 運用型広告の運用支援サービスは、広告管理ツールを使って広告効果を分析し、配信先や配信対象者を調整するなど、きめ細やかにPDCA(計画、実行、評価、改善)を回すことで、広告主が支払った広告費の効果をより高めることが求められる。そして、その広告配信データをレポートにまとめて広告主に提出する。ところが、このレポートの作成段階で不正が行われていた。

320万円分の架空請求

 電通においては、レポートを作成する場合、表計算ソフト「Excel」などに、複数の広告プラットフォームのデータを統合して作成するケースが多いという。この集計の段階で計算式に誤りがあるといった人為的ミスだけでなく、担当者が故意に数値の改ざんなどを行っていたという。

 広告主はきちんと運用されているという信頼の下で、広告費を支払う。にもかかわらず、広告会社の手元で数値が改ざんされていたとなると、デジタル広告のビジネスの根幹を揺るがしかねない。他の広告代理店にもその影響が及びかねないことから、業界には怒りの声が広がっている。

 ことの発端は7月にさかのぼる。電通の有力顧客企業の1社であるトヨタ自動車から、広告の出稿量に対して効果が想定に達していないことなどを理由に、計画通りに出稿が行われていないのではないかと指摘が入った。これを1つの契機に、社内調査をした結果、広告表示回数などに人為的なミスや故意による虚偽の報告があったと判断。8月15日に中本氏を委員長に据えた調査委員会を発足させ、調査に乗り出した。

 調査委員会は中本氏のほか、電通からは経営企画局長と法務マネージメント局長の2人が参加。さらに弁護士と、電通の会計監査に直接携わっていない監査法人のコンサルタントの合計5人で構成される。

 調査対象となる広告主企業は、社内にデータが残っている2012年11月以降に、運用型デジタル広告を受注した1810社で、キャンペーン数は約20万件。9月22日時点で不適切業務に当たると判断された案件は633件で、対象となる広告主は111社。不適切業務に相当する金額は約2億3000万円とした。

 そのうち14件、金額にして320万円が、広告が掲載されていないにもかかわらず掲載費を徴収した架空請求に当たる。例えば、本来ならディスプレイ広告を月間で1万回掲載する契約だったが、運用がうまくいかず9000回の掲載にとどまった。こうした場合にも、1万回の掲載分の広告費を徴収していた。

 調査は現在も継続中だという。その結果次第では、不適切業務に相当する金額がさらに拡大する可能性は高いものの、「残りの3カ月で3倍に膨らむようなことはない」と中本氏は言う。今後、「該当する広告主には適時報告をする。そして、すべての調査を年内に終えて、改めて会見をする」(中本氏)方針だ。