宅配のラストワンマイル問題を解消する取り組みとして、宅配業界が先行して力を入れたのが、コンビニや郵便局など自宅以外での受け取りと、宅配ロッカーの利用である。

サプライヤー編:マッチングサービスに期待集まる

 自宅以外の受け取りは、アマゾンやセブン&アイ系の「オムニ7」などがコンビニでの受け取りを採用。宅配ロッカーは、冒頭で記した通り、ヤマト運輸の関連会社などが設置を進め、利用が増えている。

 だが、これらはユーザーが限定される傾向が強く、問題解消の切り札として十分ではない。物流会社やIT企業には、その他の手段も求められているのが現状だ。

 そんな中、EC事業者やオムニチャネル企業からの期待を集めているのが、アプリなどを使って、荷主と荷物を運ぶドライバーや運送会社を結び付けるマッチングサービスだ。

セルート、ラクスルなどが提供するマッチングの仕組み。下はセルートのアプリ「DIAq」で荷主が注文時に見られる画面
セルート、ラクスルなどが提供するマッチングの仕組み。下はセルートのアプリ「DIAq」で荷主が注文時に見られる画面

 バイク便が主力のセルート(東京都新宿区)は今年8月、アプリ「DIAq(ダイヤク)」をリリース。アプリ上で荷主と、トラック運転手やバイク、自転車を持つ個人をマッチングするサービスを開始した。

 荷主が荷物を発送したいとき、アプリを起動すると、周辺にいる複数のドライバーが画面に表示される。荷主はドライバーが提示する料金や過去の利用者による評価などを参考にして、配送を委託するドライバーを決める。マッチングが成立したら、アプリ上で注文手続きは完了。実際にドライバーが荷物をピックアップして配送が完了するまで、荷主はアプリ上で進捗を確認し、そのうえで料金を支払う仕組みだ。

 一般の個人をドライバーとして活用するため、「物流業界が抱える構造的な人手不足の解消に貢献できる」(セルート エージェントアイ事業部デリバリュー東日本営業本部の松崎晋也本部長)。

 まずは東京23区を対象にサービスを始め、初年度で2万個の配送を目指す。「サービス開始前に数百人のドライバーが登録し、既に複数のEC事業者から引き合いがある」(松崎氏)。

 当初は繁忙期に、EC事業者が利用するとみられる。「登録ドライバーが増えれば、ドライバー同士の競争で、大手の宅配料金よりも配送料金が低くなり、EC事業者の利用が増える」(松崎氏)と見込んでいる。

 同じくマッチングサービスとしては、ラクスルが2015年から展開する「ハコベル」もある。車両約2000台とドライバー約1800人が登録され、約9600社の荷主が利用している。こちらは荷主と物流会社をマッチングするサービス。既に仕出し屋から客先に大量の弁当を届ける際などに活躍しているという。

ロボネコヤマトで買い物も

 宅配最大手のヤマト運輸も、宅配のラストワンマイルの問題を解消するための継続的な工夫を怠っていない。10月1日からの個人ユーザー向け料金の値上げに合わせ、荷物の配送先を自宅ではなくヤマト運輸直営店にしたら54円割り引くことなどを始める。クロネコメンバーに登録すれば、さらに割引を受けられる。

ヤマト運輸がDeNAと実用実験を進める「ロボネコヤマト」
ヤマト運輸がDeNAと実用実験を進める「ロボネコヤマト」
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「ロボネコヤマト」の配送先を画面上で指定できる
「ロボネコヤマト」の配送先を画面上で指定できる
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実験中の「ロボネコヤマト」は、宅配ロッカーを積んだクルマが、利用者の指定した場所に10分刻みの指定時刻で到着するサービス。将来の自動運転の実現を見越している
実験中の「ロボネコヤマト」は、宅配ロッカーを積んだクルマが、利用者の指定した場所に10分刻みの指定時刻で到着するサービス。将来の自動運転の実現を見越している
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 また、自宅までドライバーが荷物を運ぶ代わりに配送トラックまでユーザーが荷物を取りに行く「ロボネコヤマト」サービスの実用実験も、DeNAと今年4月から始めた。

 これは、ユーザーがアプリの地図上で荷物を受け取る場所を指定し、配送時刻を10分刻みで指定できるもの。するとロボネコヤマトの車両が時間通りにやってきて、ユーザーは本人認証を済ませた後、車内の宅配ロッカーから荷物を取り出すだけだ。実験では、宅配便の受け取りと、地域の商店からの買い物(ドライバーが買い物を代行)という2つのメニューを用意。「当初の予想以上に地域の商店からの買い物に利用されている」(ヤマト運輸ネットワーク事業開発部情報ネットワーク戦略課の畠山和生課長)という。

 もともとは、自動運転が実用化されたときの宅配を見据えた実験だったが、実用化まではドライバーが運転する必要がある。その結果、「通常のヤマト運輸の宅配便のドライバーと比べて、ドライバーに求められる技量が少なくて済むと分かった」(畠山氏)。1人ひとりの顧客と長く対話する必要はなく、専用タブレット経由で配送ルートがすべて指示されるため、配送ルートを考える必要も、2トントラックを運転して重い荷物を運ぶ必要もないのだ。

 ロボネコヤマトが普及すれば、当面は雇用するドライバーのすそ野が広がり、宅配のラストワンマイルが直面する人手不足を解消する効果があるというわけだ。

 ECの成長を加速させるには、宅配のラストワンマイル問題の解消が喫緊の課題となる。宅配の現場にかかる負荷を軽減しながら、ユーザーの利便性を引き上げてLTVを向上させるため、EC事業者や宅配会社は、まだまだ知恵を絞る局面が続きそうだ。