サイバーエージェント(以下、CA)が60%、テレビ朝日が40%をそれぞれ出資する共同出資会社AbemaTV(アベマティーヴィー、東京都渋谷区)が運営するインターネットテレビ局「AbemaTV」の視聴用アプリが、開局から5カ月目の9月11日に累計800万ダウンロードを突破した。AbemaTVのマーケティングを担当するCA宣伝本部長の野村智寿氏は「想定していたよりも順調な滑り出し」と語る。

 AbemaTVはドラマや音楽、スポーツ、アニメなど約30チャンネルを、24時間すべて無料で放送しており、月額課金制の「dTV」や「Hulu」、「Netflix」などとはビジネスモデルが大きく異なる。CAの藤田晋社長は「AbemaTVは、従来の新聞やテレビのようなマスメディアを目指す」と宣言している。そのため認知を広げ、視聴用アプリを数多くダウンロードしてもらう必要がある。CAが得意とするリワード広告やソーシャルメディアを使ったマーケティングだけでは、必ずしも効果的とは言えない。

シンプルなテレビ欄形式を採用

 そこでAbemaTVはデジタルとリアルとを組み合わせた施策を打ち出している。中でも効果が高かったのが、アナログの極みといってよい新聞の折り込み広告を使って、新聞購読層への訴求を狙った試みだ。

AbemaTVが7月16日に展開した全8ページの新聞折り込み広告
AbemaTVが7月16日に展開した全8ページの新聞折り込み広告

 7月15日から新しいテレビCMの出稿を全国で始めたのに合わせて、翌16日に折り込み広告1000万部超を全国紙や地方紙で展開した。全8ページある折り込み広告のデザインは、新聞のテレビ欄を模したもの。野村氏は「AbemaTVの放送内容やサービスの特性を、受け手に直感的に理解してもらうには、馴染みのある新聞のテレビ欄形式が最も受け入れられやすいと考えた」と語る。

 実際、折り込み広告を展開すると「アプリのダウンロードが増えた上に、アプリによる番組閲覧率が上がり、パソコンからのアクセス割合も向上した」(野村氏)という。新規加入を促すと同時に、視聴者の活性化にも貢献した格好だ。

 一方で、10~20代という若年の視聴者取り込みを狙って、7月上旬に東京・渋谷の「109」前に仮設サテライトスタジオを設けたり、東京・原宿でAbemaTVのイメージを伝える屋外広告を展開したりした。その上で、施策に反応してTwitterなどでつぶやいた消費者に、Twitter公式アカウントなどからAbemaTVの視聴を働きかけた。

 その結果、4月末は会員全体の11%だった18~24歳の層が7月末には同29%に、同じく27%だった25~34歳が7月末には32%となった。

 今後もデジタルとリアルとを組み合わせて「AbemaTVとは何かを分かりやすく伝えるシンプルなメッセージ」(野村氏)を発信し、年代や性別のバランスにも配慮しながら、視聴者の増加を図る。

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