資生堂が、Twitterの新しい広告メニュー「モーメント」を活用したブランディングに取り組んだ。モーメントとは、ユーザーの間で話題になっているツイートをキュレーションし、雑誌のページをめくる感覚でTwitterの画面をスワイプすることで、関連する多くのツイートを楽しめるサービス。日本でモーメントの広告メニューを利用するのは、資生堂が初めてだ。

 対象とした商品は「マキアージュ」ブランドの薬用美白フェースパウダー「スノービューティー Ⅲ」。20~30代の女性をターゲットに、事前に予約を受け付け、数量限定で年に1回だけ発売するタイプの製品で今年が発売3年目だ。その新製品を9月21日から発売するに当たって、限定されたメディアを使って話題を喚起しつつ、Twitter上でユーザーのエンゲージメントを高める作戦を採った。

 まず7月7日に、俳優の窪田正孝さんと二階堂ふみさんを起用したWeb限定ネット動画を同社の公式YouTubeチャンネルなどで公開。さらに、ネット動画の素材を使って制作し、放映日を1日に限定した60秒テレビCMを7月に出稿。同じく7月中旬から電車内や駅の広告掲示板にネット動画の絵柄を使った交通広告を掲載した。

Twitterの広告メニュー「モーメント」にまとめた動画の一部。スマートフォン上では画面を左にスワイプすることで、まとめられた動画を順番に見ることができる
Twitterの広告メニュー「モーメント」にまとめた動画の一部。スマートフォン上では画面を左にスワイプすることで、まとめられた動画を順番に見ることができる

 その上で、それまでに展開したネット動画やテレビCM、交通広告に対してユーザーが示した反応を踏まえ、エンゲージメントが上がりそうなネット動画の中のシーンを、窪田正孝バージョンと二階堂ふみバージョンそれぞれで6つずつまとめ、8月10日にモーメントとしてTwitter上に広告展開したのだ。

 資生堂ジャパン コミュニケーション統括部企画グループの中條裕紀氏はその狙いをこう語る。「2015年もWeb限定の動画を制作して公開したが、高めたい情緒イメージの強化に課題が残った。そこで2016年は、インタラクティブ性を強化してユーザーにソーシャルメディア上で話題にしてもらおうと考えた。Twitterが日本市場への導入を計画していたモーメントがこの狙いにぴったりだったので、Twitter中心の展開を選んだ」。
 

今後もブランディング分野でデジタルを活用

 結果は想定を上回った。モーメントを使って広告を打ったところ、リツイートや「いいね」などの数を足したTwitterのエンゲージメント数は、「通常のTwitter広告の時と比べて3.5倍になった。これは想定以上の反応だった」と中條氏は言う。また、事前に展開したテレビCMや交通広告を見たという話題もTwitter上で頻繁につぶやかれており、「リアルなメディアとTwitterを絡めた場合の効果も確認できた」(資生堂ジャパン コミュニケーション統括部メディア戦略室コスメティクスグループの梶浦砂織マネージャー)という。

 資生堂ではこれまで、EC(電子商取引)サイト「ワタシプラス」など、ユーザーのダイレクトレスポンスを必要とする分野でのデジタルマーケティングの活用が目立っていた。今後は、今回の試みを踏まえ、取引先や社内の理解を得ながら、「ブランディングの分野でもデジタルマーケティングの活用に積極的に取り組んでいく」(中條氏)という。

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