「アルシンドになっちゃうよ!」

 元サッカー選手のアルシンドさんを起用したテレビCMなど、いまだ記憶に残るインパクトの大きなテレビCMで一世を風靡したアデランス。だが、時代の変化への対応が遅れ、業績は悪化をたどる一途だった。

 「2000年以降、男性向け商品はテレビCMの効果が薄れ、2011年ごろには売り上げは全盛期の10分の1にまで落ち込んだ」。金子英司WEBインテグレーション室長はこう振り返る。テレビCMの効果が薄れれば、出稿量を減らす。すると、さらに売り上げが下がる。こうした負のスパイラルがもたらした結果だった。

 一方で、ネット広告についても、「当時契約していた広告代理店は、単に空き枠に広告をだすようなずさんな管理だったため、CPA(獲得単価)が非常に高かった」と金子氏は言う。そこで立て直しを図るべく、2013年の秋以降から、体制を整えてデジタルマーケティングに本格的に取り組み始めた。2016年には、デジタルマーケティングにかける予算を、2013年と比較して3倍にまで増やした。その結果、2016年3~5月期には、Webからの問い合わせ件数が前年同期比で2.4倍になるなど、Web経由のマーケティングの効果が高まっている。

 アデランスがデジタルマーケティングを強化する上で、まず取り組んだのが、ネット広告の効果を正しく測定するための指標の策定だ。以前は、最終的にコンバージョンにつながった直接的な効果だけを重視していた。それを改め、新たに広告を閲覧したり、クリックしたりしたことが後のコンバージョンにつながる「間接効果」も併せて分析するため、第三者配信の仕組みを導入した。

2つの指標で広告を評価

 導入後は、広告を「直接効果」と「間接効果」の2つの軸で評価している。

 まず、直接効果については2種類のコンバージョンを広告効果とする。1つは従来通り、広告をクリックしてそのままコンバージョンした場合。新たに加えたのは広告を閲覧、あるいはクリックした後に、自然検索経由でアデランスのサイトを訪れてコンバージョンした場合だ。これもビュースルーコンバージョンとして、直接効果に含める。これを第1指標としている。

 これだけでも、広告効果を正しく測る上では非常に重要だ。例えば、8月の広告効果を見た場合に、リターゲティング広告の「AdRoll」はクリックから直接コンバージョンしたケースだけで分析するとCPAが非常に高く効果が低い。ところが、ビュースルーコンバージョンまで含めて見ると、最も安価なCPAで獲得できていると評価される。

 次に、複数の広告を経由してコンバージョンした場合は、各広告の効果を重み付けを変えて、間接効果として評価する。例えば、「閲覧」の貢献度は2、「クリック」の貢献度は8といった具合だ。こうした間接効果を四半期に1度評価して、予算配分の最適化に生かしている。分析については、デジタルマーケティング支援のデジタルガレージと第三者配信のロックオンとタッグを組んで実行している。

Web経由で資料請求ができるアデランスのWebサイト
Web経由で資料請求ができるアデランスのWebサイト

 このように広告効果の最適化に取り組むほか、直近ではオウンドメディアのデータ活用も強化している。問い合わせをした見込み客のWebサイトのアクセス利用履歴を営業担当者が見られるようにして、デジタルを活用した営業支援に生かしているのだ。「従来は電話の応対などを記録して、それを基に営業担当者が来店時に接客していた。Webが獲得チャネルの中心になってくると、名前とメールアドレスぐらいしか事前には分からなくなり、対応が難しかった。そこで、きちんと見込み客のニーズを把握するための仕組みを導入した」(金子氏)。こうして、デジタルを活用したリアルのコンバージョン向上にも今後、挑んでいく考えだ。

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