FacebookやInstagram、スマートフォンアプリ「MUJI passport」などを通じて消費者と対話し、売り上げ増加につなげている「無印良品」。9月4日に実施した「デジタルマーケティング100」セミナーに、同ランキングで1位になった良品計画の川名常海WEB事業部長が登壇。その秘けつを明かした。

「共感されると、遠くまで伝わる」(良品計画の川名常海WEB事業部長)
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「共感されると、遠くまで伝わる」(良品計画の川名常海WEB事業部長)

 無印良品は、消費社会へのアンチテーゼとして1980年に生まれたブランドだ。大量生産され、商品が「売り込み」で販売されていた時代に、企業や資本の論理から距離を置き、生活者が納得して購買できる、シンプルで省資源なもの作りを目指してきた。無印の商品は、「一見商品だが、思想であり、ライフスタイル」(川名氏)なのだ。

 WEB事業部のミッションは、そんな「無印の理念」を伝え、活動に共感したり、応援・参加したりしてくれるファンを増やすこと。まず理念を発信し、共感してくれる人を見つけてつながり、継続的に会話する――という流れでコミュニケーションしてきたという。

 各商品のマーケティングも理念から出発する。川名氏が例として挙げたのは「足なり直角靴下」だ。一般的な靴下は、機械編みの都合で120度の角度に曲がっているが、同商品は、足の形に沿うよう直角に編んでいる。この商品をアピールするに当たっては、「企業の論理ではなく生活者の論理にのっとり、世界を豊かにする」との理念を前提にした。そして、「機械による大量生産を優先し、はきごこちが二の次になっていた靴下を、誕生の原点までさかのぼってリデザインした」と企画の理由を説明した。その上で、「人間中心のデザインに作り直した靴下です」と商品をアピールする。商品の特徴や価格だけでなく理念を語ることが、共感を呼ぶのだ。

 共感を軸に、顧客と良品計画との会話が生まれる。社員や店舗スタッフは無印のファンが多く、会社の外に出れば顧客と同じ1人の生活者だ。「生活者と生活者との間に会話を構築する」イメージで、店舗で顧客と対話したり、SNSに投稿したりしてきたという。

 「『これを買ってほしい』だけではなく、継続的に会話し、関係性を構築すること」が愛されるブランドになるために大切だと、川名氏は説く。

「メディア投資」から「つながり投資」へ

 同社もかつては、メディアに広告を出すなど「メディア投資」でメッセージを伝えてきた。最近はSNSやオウンドメディアなど、ファンと直接対話できるチャンネルに投資する「つながり投資」を重視している。

 例えば、100万人の顧客と会話したい場合、「100万人にリーチするマスメディアを買うのではなく、理念に共感した100人がさらに100人に届け、その100人が100人に届ける」形で100万人に届けるのが理想。「共感者から共感者にパスを出すコミュニケーションを心がけている」という。

 最近では、動画にも力を入れている。あるスニーカーをPRする「CMっぽい」動画と、スニーカー好きの韓国のスタッフが工場に潜入し、どんな背景で作られたかをドキュメントで伝える動画を制作。それぞれをSNSに投稿したところ、後者が圧倒的に人気で、1700万回も再生されたという。「共感されると、遠くまで伝わることが分かった」と川名氏。

 買い物などで「マイル」がたまる仕組みで、会員数が1440万人に達しているMUJI passportもデジタルマーケティングの核だ。「無印が好きな人が集まる“国”のパスポート」という思いで名付けており、買い物だけでなく、商品を調べたり、店舗にチェックインしたり、コミュニティーサイトにコメントを書き込んだりしてもマイルがたまるようになっている。

 このMUJI passportなどを通じ、購買前後の顧客の行動を知ることが、顧客との関係性強化につながるという。

 「小売店は従来、商品の購入時点に注目したPOS(販売時点情報管理)データだけでマーケティングしていたが、顧客との関係性を長く続けるためにはそれだけでは足りない。なぜ買ったのか、なぜ買い続けてくれているのか、不満はないか、どんなライフスタイルかなどを知って寄り添い、しっかり対応する必要がある」と川名氏は語った。