企業広報を題材とするドラマ「リスクの神様」が今年7~9月期にフジテレビジョン系で放送されたのに続き、PR業界に焦点を当てた映画「東京PRウーマン」が8月22日に封切られた。大手PR会社のベクトルがBS-TBSと共同製作したもので、主人公がPR業務を通じて成長を遂げる様子をコメディタッチに描いた、就活学生向けアピール映画だ。作品内で商品をさりげなく露出・宣伝する「プロダクトプレースメント」をさらに発展させた、ストーリーを通じて企業を理解してもらう「ストーリープレースメント」映画という触れ込みだった。
そこで、業界の勉強に加え、主人公を務める「CanCam」専属モデルの山本美月さん見たさもあって、実際に映画館に観に行った。その後、映画を見た他の人はどんな感想を持っただろうかとTwitterで「東京PRウーマン」ツイートを検索したところ、その結果は驚愕するものだった。
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こんな宣伝ツイートが就活関連アカウント群から大量に投稿されていたのだ(図参照)。これらのアカウントは、大学別のほか、業界別、地方別に100個以上存在する。
映画公開前日から次の週末までの8日間で「東京PRウーマン」を含むツイートを本誌がカウントしたところ3195件あり、うち4分の3を超える2429件が、この就活関連アカウント群から一言一句同じ内容で投稿されていた。連続した同一宣伝投稿と言ってよい。
ベクトル広報によれば、「このアカウント群は、以前業務で付き合いのあったギブリー(東京都渋谷区)さんが運営しているもので、この映画が就活生向きということで、情報として載せてくれたようだ」とのこと。とはいえ、映画を観てPR業界に好印象を持った就活学生が、後でこの宣伝投稿を見たら、「現実のPRの実務はこんなものか」と勘違いし、興ざめする可能性は高そうだ。映画はベクトルのみならずPR業界全体のイメージ向上に貢献するはずなのに、後味の悪さは否めない。
公式を名乗るが就活学生に運営元は明かさず
また、ギブリーが運営する就活アカウント群そのものも、問題をはらんでいる。同社はソーシャルメディアを活用した採用活動(いわゆる「ソー活」)の支援をしている。その一環として、大学の運営でも公認でもないのに、早稲田就活2017【公式】(@wasedashu)、東大就活2017【公式】(@todaishu)、京大就活【公式】(@kyodaishu)など「公式」を名乗り、一方で運営元は明かさずに、就活学生をフォローさせている。こうした手法に対して、「大学の名を騙るアカウントに苦慮しております」(南山大学キャリア支援室)と、大学側からは不快感、懸念の声も聞こえてくる。
なお、これら就活アカウント群は、就活学生にリーチするメディアとして、パソナやキャリアデザインセンターといった上場企業が主催する就活関連セミナーの告知・集客にも利用されている。
ソーシャルメディアの利活用を広げていくためには、今後、利用者や関係者に不審の念を抱かれないアプローチが求められるようになるのではないだろうか。