本誌は9月4日、7月号特集「デジタルマーケティング100」の上位企業を講師に招いた読者無料セミナーを東京・大崎で開催した。その登壇企業の中から、まずはタリーズコーヒージャパンWEB・SNSチームリーダーの小林広美氏の講演を紹介しよう。
消費者向け(BtoC)の主要業界における代表的な企業・ブランドのデジタルメディアの活用度合いをランキング化した「デジタルマーケティング100」。9月4日に東京・大崎で開催した「デジタルマーケティング100」徹底解説セミナーにタリーズコーヒージャパンWEB・SNSチームリーダーの小林広美氏が登壇。「利用者目線を意識したタリーズコーヒージャパンのソーシャルメディアへの取り組み」と題して講演した。
タリーズは消費者が情報接触後に「友人・知人に商品・サービスをすすめた」と答えた人の割合を示す「推奨スコア」で6位に入っている。基本的にWeb広告を利用しないタリーズ。その同社はソーシャルメディアを活用し、利用者の共感を得るコンテンツづくりに注力している。
小林氏がタリーズのソーシャルメディアを運用する上で、利用者視点からまず確認するのは、その日の天気だ。カフェチェーンの場合、商品の売れ筋やボリュームは天気に大きな影響を受けるからだ。その日が晴れて気温が高ければ、利用者の気持ちを動かす商品はアイスドリンクとなる。
その上で、ソーシャルメディアそれぞれの大まかな利用者属性と反応の傾向を把握し、投稿内容を考えることが重要であり、ソーシャルメディアごとに、同じ商品を訴求する投稿でも、文章などを変えている。
例えば、この夏限定商品の「すいかスクイーズ100%」。Facebookでは、この商品に使用しているすいかの品種など、かなり詳しい情報を記載した。だが、Twitterでは、「みずみずしい果汁そのままに」と訴求ポイントを短い文章に盛り込み投稿したという。
また、赤と青のビビッドな色合いが特徴的なタンブラーを取り上げた投稿では、Instagramではブランド色を重視した内容に、Twitterでは「どちらの色がお好みですか?」と投稿を見た人と会話のキャッチボールが楽しめるような内容にすることを意識したと話す。
商品を実際に購入して訴求点を探す
小林氏は自社商品を自分自身で購入して、訴求ポイントを考えていると明かした。ドリンクのカスタマイズやフードとの組み合わせのアイディアを見つけるには、実際に飲んで食べてみないとわからないからだ。
若い女性に人気が高い「マンゴータンゴスワークル」という商品をカスタマイズした投稿では、アイスクリームをトッピングした写真を投稿したところ、「インスタ映えする」と話題になり、購入単価の押し上げにもつながったという。
実は同社のTwitterとInstagramの投稿で使っている写真は、小林氏自身が撮影しているものが大半になっている。プロカメラマンが撮影した写真を使うこともあるが、利用者からの共感を得やすく、テーマ性を持った継続的な投稿とするために、小林氏が撮影した写真を使うことが多い。
撮影のために訪れた店舗で、スタッフから、「この商品には、こんな楽しみ方がある」といった意見をもらい、投稿コメントの参考にすることもできる。
小林氏の役割は、ソーシャルメディアを運用しながらタリーズブランドへの愛着を高めていくことだ。デジタルマーケティング100調査において同社の「推奨スコア」が高かったのは、小林氏の投稿を見た利用者が、思わずそれを友だちに知らせたい、拡散したいと思わせる仕組みが機能したからだろう。今後もタリーズは、ソーシャルメディアを活用し、ファンに寄り添うコミュニケーションを継続していく考えだ。