冷凍食品メーカーのマルハニチロが、9月1日に発売した冷凍パンケーキ「ハワイアンパンケーキ&マカダミアナッツソース」は、パンケーキ2枚にソースをトッピングした商品だ。同商品、実は前シーズンのパンケーキ商品よりパンケーキが1枚少ない。本来は今シーズンも3枚で販売する予定だったが、商品開発を終える直前で、急きょ2枚に変更した。その判断の決め手となったのが消費者の声だ。
マルハニチロは今年から、冷凍食品ブランド「アクリ」の会員サイトを開設している。枚数の変更は、そのサイトに登録した会員の意見や、ネットを活用したサンプリングキャンペーンで得られた消費者の声などに耳を傾けた結果、商品の改善になると判断して決断した。

マルハニチロがそうした会員サイトを運用し始めた狙いは、消費者の声を聞くこと以上に、ブランディングの強化という意味合いが強い。
大半の冷凍食品は機能で差異化することが難しく、「店頭で見て安価だったからその商品を手に取った」という消費者が多くなりがちだ。このため、商品ジャンルとしてそもそもブランドが成立しにくく、リピートにもつながりにくいという傾向がある。そこでこれまでも、「いかにして小売りの店頭で消費者と接点を作り、能動的にブランドや商品を選んでもらえるか腐心してきた」(冷凍食品ユニットアクリ事業部企画課の長岡美月課長代理)。今回の会員サイトの開設は、サイトを通じて消費者との関係を深め、ブランドへの愛着を持ってもらうことを目指したのだ。
会員サイト開始でメルマガ終了
会員サイトを始めた結果、メールマガジンが機能していなかったという点も明らかになった。マルハニチロは以前、13万人超が登録しているメルマガを運営していた。ところが、開封率の計測などをしていなかったこともあり、どの程度アクティブな会員がいるかは分かっていなかった。
今回、会員サイトを開設した後、数よりデータの取得を重視して、メルマガからサイトへ会員を誘導したところ、「誘導できた数は非常に少なかった」(長岡氏)。アクティブな会員が非常に少ないらしいということが判明したため、メルマガを思い切って終了し、会員サイトへの経営資源の集中を決断した。会員サイトはソーシャルメディアマーケティング支援のアライドアーキテクツの会員サイト構築サービスを活用して開設している。
この新たな会員サイトでは、新製品のサンプリングキャンペーンなどを実施している。冒頭のパンケーキの改善は、こうしたサンプリングキャンペーンで得た、会員のアイデアを参考材料にした。例えば、「調理に関して、パンケーキが3枚だと重なっている部分が冷たいという不満点が、かなり具体的な意見として寄せられた」(長岡氏)。お客様からの相談に対応する部署にも同様の意見が寄せられていた。
経験則から、調理が難しい、あるいは調理が失敗しやすい商品は、やがて売れなくなる可能性が高いと分かっていた。そのため、開発終了間際にも関わらず、容量はそのままにパンケーキの枚数を2枚に減らす判断を下した。
今秋からは、こうした活動をさらに加速する。約20商品のパッケージに、会員サイトへ誘導するQRコードを掲載。商品の購入者の会員化を促進することで、実際に商品を買った顧客の声をたくさん集めることを目指す。