旅行ガイドブックや地図を主力とする出版大手の昭文社が、画像などのデジタルコンテンツを蓄積・管理するデジタル資産管理(DAM)システムを、今年6月から本格的に導入した。出版物に使われる画像をDAMで管理し、自社のWebサイトやソーシャルメディア、スマートフォン向けアプリなどに迅速に活用し、マーケティングを強化して出版物の売り上げ増を図るのが狙いだ。

 これまで昭文社では原則、出版物に使用した大量の画像は、出版物の制作終了後に共有サーバーに蓄積・保管し、改めてWebサイトやソーシャルメディアなどで活用していた。出版物の制作中に他のメディアで画像を利用するのは難しく、加えて「画像を再利用できるか、すぐには分からなかった」(メディアコミュニケーション本部コンテンツ企画部の星野俊也氏)。例えば、これまでは出版物の制作開始から完成まで約4カ月、サーバーに画像を保管して他のメディアに展開するまでさらに1カ月弱、といった期間が必要だったという。

 しかも、サーバーには出版用に加工した画像が保管されており、元の画像は当該ページを制作した外部の編集プロダクションや、撮影を担当したカメラマンの手元にしか残っていなかった。このため、画像のサイズを小さく加工してしまうなどして、他のメディアでは使いにくいといった事態も生じていた。

 そこで、カナダに本拠を置くDAM大手、ノースプレインズの「xinet(ザイネット)」という製品をカスタマイズして導入。問題の解決を図った。

画像にメタデータを埋め込み管理を容易に

 社員や外部の編集プロダクションのスタッフ、カメラマンは、撮影した画像や取材先から借りた画像をまずDAMの保管領域にアップロード。その際、画像の内容や撮影日時、著作権者、他メディア利用の可否といったメタデータを記入する。そして、1つの出版物を作るたびにDAM内にフォルダを作成。保管領域から利用する画像をコピーし、その画像を使って編集プロダクションなどに加工を進めてもらうようにした。

DAMシステムの画面。画像検索した結果をメタデータ付きで表示した
DAMシステムの画面。画像検索した結果をメタデータ付きで表示した

 こうすれば加工前の元の画像はDAMに保管されるし、画像に埋め込まれる仕組みのメタデータなどのおかげでDAM内の画像検索もしやすくなった。「今のところDAMを利用する外部の取引先は50社程度だが、できるだけ早く取引のある約100社すべてに利用してもらうようにしたい」と星野氏は語る。

 今回のDAM導入で、出版物の制作スピードが向上したのに加え、「Webサイトやソーシャルメディア、アプリなどへもほぼ同時に画像を展開できるようになり、マーケティングがしやすくなった」(星野氏)。まだ売り上げ増などの明確な成果にはつながっていないが、「制作工程の効率化は進み、利益率向上に貢献している」(星野氏)という。

 もっとも課題は残っている。DAM導入以降の画像はメタデータ付きで保管されるが、これまでの画像は、DAMの中に移しこそしたが、まだメタデータ付きになっていない。「時間をかけてメタデータを付ける」(星野氏)という作業が終わったときこそ、昭文社が新たな攻勢をかけるタイミングなのかもしれない。