
衣料品や雑貨販売を主力とするセレクトショップ大手のビームス(東京都渋谷区)は来春、スマートフォン向けアプリをリリースすることを決めた。店舗やWebサイトに加えて、消費者との接点を増やし、ビームスへのロイヤルティーを高めることで、1人当たりの売上高の増加や、休眠会員の掘り起こしを狙う。
アプリ投入を機に、全国に約140あるリアル店舗で発行している会員カードと、同社のEC(電子商取引)サイト「BEAMS Online Shop」とで管理している会員情報、購買履歴データなどを本格的に統合する予定だ。その上で、アプリから店舗への送客を重視したさまざまな施策を盛り込み、O2O(オンラインtoオフライン)の実を上げることを目指す。
店舗を訪れてアプリを使ってチェックインすると、アプリ内で「バッジ」がもらえる新しい仕組みも盛り込む。バッジを所定の枚数集めると、非売品の特製グッズのプレゼントに応募できる。このバッジを「来店を促すインセンティブにする」(社長室宣伝広報統括本部課長 デジタルコミュニケーションマネージャーの関根修二氏)考えだ。当初は来店のインセンティブとしてポイント付与も検討したが、「『ポイント付与は強い来店動機にならない』という店舗の声を尊重し」(関根氏)、特製グッズのプレゼントに切り替えた。
興味関心に沿った情報をフィード画面で配信
アプリ利用者には、男性用か女性用か、よりカジュアルな商品かよりフォーマルな商品かなど、アプリ上に示すいくつかの項目の中から、興味のあるアイテムやニュースを選んでもらう。併せて、自分のよく行く店舗も指定してもらう予定だ。
この選択に従って、興味のあるアイテムに関わるトレンド情報、セール情報、よく行く店のスタッフがブログに掲載した商品情報や、コーディネート写真などをアプリのフィード画面に表示。消費者の志向に合わせて絞り込んだ情報を配信することで、ビームスへのロイヤルティーを高めるとともに、リアル店舗への来店を促そうとしている。
ECサイトは、自宅や勤務先の近くに気に入ったリアル店舗がない消費者などのニーズに応える“補完手段”と位置づける。「店舗の個性的なスタッフによって、他では得られないコーディネート体験を楽しめる」(関根氏)ことがビームスの強みと考えているからだ。
アプリには、商品やサービスについて消費者がビームスの担当者に問い合わせることができるチャット機能「チャットコンシェルジュ」も盛り込む方針だ。今年6月に、父の日向けのキャンペーンの一環としてWebサイトに導入したところ好評だったため、アプリにも導入する。「(キャンペーン期間中の)19日間は平均5件の問い合わせが、ほぼ毎日きた」(社長室宣伝広報統括本部課長 コミュニケーションマネージャーの山村香代子氏)と言い、「アプリでレギュラーサービスとして展開すれば、消費者のロイヤルティー向上に貢献する」(関根氏)と考えているからだ。
O2Oを最大の狙いとするアプリの投入で、ビームスの店頭へどれほどの消費者が実際に足を運ぶのか。今から楽しみではある。