「LINE」でメッセージを配信すると、登録する「友だち」の8割が来店する。
こんな驚異的な集客率を誇るのが、神奈川県相模原市の国道16号線沿いにあるセルフサービス型ガソリンスタンド「セルフ上鶴間SS」だ。同店は中小企業向けのマーケティングツール「LINE@」を活用して、既存顧客に再来店を促すマーケティング施策に取り組んでいる。
LINE@導入以前は、全社的にメールマガジンを活用していた。ところが、スマートフォンの普及やコミュニケーションツールとしてのメールの利用低下などの理由により、「有効な配信数は、ここ数年でピーク時の3分の1にまで減少した」と、ダイヤ昭石(東京都新宿区)セルフ上鶴間給油所の高橋政人店長は話す。
メールに代わるマーケティングツールとして、LINE@に目を付けた。同店の顧客は30〜40代が多く、スマホの利用率も高いことが予測された。
また、LINE@は無料プランが用意されているため、導入のハードルが低い。そこで無料のプランを試用してみることにした。
ガソリン売り上げにも貢献
まずはメッセージを受け取る人の数を増やさなければ効果は上がらない。そこで、LINEで送ったパスワードを給油機の操作時に入力すると、ガソリンが1リットル当たり2円安くなるキャンペーンを実施した。LINEに友だち登録することで、よりお得にガソリンスタンドを利用できることを、接客時や店内のPOPなどで来店客に伝えることで、登録を促進。このLINE経由で送ったパスワードの入力数を指標として効果を分析したところ、「配信数の7〜8割に当たるパスワード入力数が確認できた。ガソリンの販売ボリュームもかなり伸びる」(高橋氏)など、売り上げにも貢献した。
そこで、より積極的に活用するために、有料プランへと切り替えた。切り替え後はこれまで実施してきた、パスワードの入力でガソリンが割引になるキャンペーンだけではなく、さまざまなサービスを伝えることでアップセルを狙うメッセージ配信にも取り組み始めた。
同店の顧客のうち約1割が、洗車やクルマに傷が付きにくくなるコーティングなどのサービスを利用する優良顧客に当たる。給油以外のサービスを利用するこの顧客数を増やして、いかにLTV(顧客生涯価値)を高めるかが、店舗の売り上げ拡大のポイントとなる。
例えば、ゴールデンウイーク中にコーティングの予約を申し込むことで、10%割引になるキャンペーンをLINEで告知したところ4件の受注につながった。LINEはスマホで写真を撮って、そのまま送ることも簡単。そこで許諾を得たうえで、コーティングしたクルマを撮影して、「友だち」に送信した。視覚的にもコーティングの効果をより実感しやすいため、写真を見た人から、「自分のクルマも同じぐらいキレイになりますか?」といった反響が多くあるという。このような直接的な反応は、「従来のメール配信では、あまりなかった」(高橋氏)。
LINEの効果が高まってきたとはいえ、友だち数は1000人を超えた程度。3000人を目標に据えて登録者数の増加を狙う一方、2017年度内にはメール配信を停止し、LINEへの一本化を進める方針だ。