富士山を一望しながら入浴できる個室露天風呂の付いた旅館、目の前に青い海の広がる全室オーシャンビューのホテル。Loco Partners(東京都港区)が運営する「Relux」は、こうした高級旅館・ホテルを厳選した宿泊予約サイトだ。

同サイトが運営する(中小企業向けマーケティングサービス)「LINE@」のアカウントは、コンシェルジュが顧客の希望に応じて宿を提案するカスタマーサポートと、キャンペーンなどの情報発信によるマーケティングツールの両方の役割を兼ね備えているのが特徴だ。
LINE@を導入するきっかけは、カスタマーサポートの強化だった。チャット感覚で気軽に問い合わせをしてもらう場として、LINE@での顧客対応を新たに始めた。
LINE@には1対1で応対できる機能がある。これを使うことで、コンシェルジュがLINE経由での問い合わせに対応する。これが奏功した。「メールと比較して、返信率が5倍くらい高い。そのため、LINEでの問い合わせは成約率も3〜5倍高い傾向にある」と執行役員の宮下俊プロダクト統括部長は明かす。
その理由は大きく2つある。1つ目はかしこまらずに対話ができる点だ。メールは挨拶から始まり前置きが長く、堅い文章になりがちだ。そのため、返信するのが、おっくうになってしまっていた可能性がある。その点、LINEは要件を気軽に伝えられる。対話の中で、「車椅子の同行者がいるが、何階の部屋になるのか」といった要望まで引き出せるため、きめ細かな提案ができる。
誘導率はメールの10倍
LINE@を通じて問い合わせをするには、Reluxのアカウントに「友だち」登録をする必要がある。既に友だち数は3000人を超えた。当初は顧客からの問い合わせを待つ「プル型」のコミュニケーションに活用していたが、一定の規模になったことから、クーポンが当たるキャンペーンを配信する「プッシュ型」のコミュニケーションに、試験的に活用した。すると、配信母数に対して、キャンペーンページへの誘導率はメールの10倍という、「信じられない数値」(宮下氏)をたたき出した。
この成果を受けて、情報発信のツールとしても本格的に活用していくことを決めた。情報をプッシュするツールとして活用する場合、販促施策に偏らないように気を付けている。LINEはプッシュ通知が強力な分、邪魔だと思われると簡単にブロックされてしまう。なるべく楽しんでもらえる情報の配信を心がける。例えばReluxでは、「富士山の絶景宿8選」「日本の文化を体験できる宿」といった特集コンテンツを制作して、週に2〜3回送っている。
一般的に企業がLINEを活用する場合、週1回程度の配信にとどめるケースが多い。それと比較して、Reluxは配信頻度が高いにもかかわらず、「ブロック率も低く、きちんと読まれている」(宮下氏)のは情報ニーズに応えられているからだろう。
また、2016年から新たに導入したのが「LINE ID」によるReluxのログイン機能だ。この機能で、LINEとReluxのID連携をした顧客には、旅行の出発前にLINEで通知する仕組みを開発した。強力なプッシュツールとなるLINEで通知をすることで、旅行日の3日前のキャンセル率は15%改善した。
マーケティングツールとして強力なLINE@だが、友だち数はまだ4万3000人と、メールマガジンの登録者の10分の1以下だ。今後、いかにしてLINEの友だち数を増やしていくかが課題となっている。