日経BP社が7月25日~29日に開催した国内最大級のデジタルマーケティング関連イベント「D3 WEEK 2016」。「デジタル×データ×デザインの未来」をテーマに、東京・六本木ヒルズ(六本木アカデミーヒルズ)を会場に、7月29日までおよそ100の講演やパネルディスカッションを実施した。その中からデジタルマーケティング関連の講演などを選りすぐってお届けしていく。

 「D3 Week 2016」27日15時からのトラックDでは、2コマ(90分間)を使って、「広告主はマーケティングツールの開発や広告運用部隊を自社で持つべきか」をテーマとしたパネルディスカッションが行われた。

 パネラーを務めたのは一休 代表取締役社長の榊 淳氏、ローソン デジタルプラットフォーム部マネジャーの白井明子氏、全日空商事執行役員であり、今年3月1日に全日空商事とOffice Kuroko & Co.との合弁会社として設立されたANA-Kuroko Strategic Solutions(A-Kross)代表取締役CEOの辛川敬氏。A-Krossはデジタルマーケティング領域における運用型広告などのオペレーション業務および広告販売業務を提供する会社である。そして東急ハンズ執行役員の長谷川秀樹氏がモデレータを務めた。

東急ハンズ執行役員の長谷川秀樹氏(右)と一休 代表取締役社長の榊 淳氏(左)
東急ハンズ執行役員の長谷川秀樹氏(右)と一休 代表取締役社長の榊 淳氏(左)
東急ハンズ執行役員の長谷川秀樹氏(右)と一休 代表取締役社長の榊 淳氏(左)

 マーケティングツールや広告業務を内製化することをテーマに挙げたことについて、長谷川氏は「マーケティング領域とIT領域は外注が基本というイメージが強いが、内製化効果があると言われており、米国大手企業では内製化の波が来ている」と語る。小売大手であるウォルマートやベスト・バイはその代表例で、アドテク系の企業を買収して傘下に収めているというのだ。今回、このパネルディスカッションに登壇した4社はいずれも内製化を進めている先進的企業だ。

 東急ハンズでは、2008年よりPOS(販売時点情報管理)レジ・システムなど営業系のITシステムを内製化に徐々に切り替えていったことで、人件費は増えたが運用コストが大幅に減少。「事業の収支にかなりのインパクトがあった」と長谷川氏は明かす。

 Webで宿泊やレストランの予約事業を展開する一休の榊氏も、「以前は外注していたが、今はほとんどのシステムを内製化している」と明かす。例えばレストランのリコメンドのプログラムは榊氏自身が開発した。その理由を「モデルのアップデートのサイクルが早いこと。またリコメンドはPL(事業の損益)に与える影響が大きい。それを外注に任せ、ブラックボックス化するという選択肢は、経営陣としては選べないと思った」と言い切る。

その時々の状況に応じて内製化、外注を使い分ける

 またさまざまなキャンペーンを実施しているローソンでは、「マス広告などは外注に任せないと無理だが、Webと親和性があり、スピード感が求められるデジタル広告は内製化している」(白井氏)という。その象徴が、昨年12月に立ち上げた「ローソン研究所」というWebサイトだ。ローソン研究所には連載ブログが11個あり、ここでさまざまなキャンペーンが紹介されている。「デジタル広告は外注しても時間とコストがかかるだけ。そこで各担当者に『(決まった形式でキャンペーンを紹介する)フォーマットにしてください』とお願いし、内製に引き込んでいる」と白井氏は説明する。

ローソン デジタルプラットフォーム部マネジャーの白井明子氏(右)と全日空商事執行役員兼ANA-Kuroko Strategic Solutions(A-Kross)代表取締役CEO辛川敬氏(左)
ローソン デジタルプラットフォーム部マネジャーの白井明子氏(右)と全日空商事執行役員兼ANA-Kuroko Strategic Solutions(A-Kross)代表取締役CEO辛川敬氏(左)
ローソン デジタルプラットフォーム部マネジャーの白井明子氏(右)と全日空商事執行役員兼ANA-Kuroko Strategic Solutions(A-Kross)代表取締役CEO辛川敬氏(左)

 全日空も、デジタル広告についてグループ内で内製化を進めている。既に国内のインターネット広告の99.9%は全日空商事とA-Krossが担当しているという。とはいえ、辛川氏は「デジタル系もそのほかも、すべて内製化しているわけではなく、外注しているものもある。内製化も外注もいずれも手段の1つ。そのときの置かれた状況で選択すればよいのでは」とアドバイスする。「ただこれまでの話にもあったように、内製化に合っているのはスピードが求められるものやサイクルの早いもの、かつ自社のデータを活用しやすいものだと思う」と続けた。スピードへの対応、コスト削減だけではない。「オペレーションのノウハウが身につくのもメリット」と辛川氏は付け加える。

 では内製化することでデメリットはないのか。辛川氏は「自前でマーケティングやITの組織を持った場合、“次の環境”にちゃんと適応していけるかどうかはリスクになるかもしれない」と警鐘を促した。また榊氏も、「広告代理店の方が、世間の動きをつかむのが早い。そこは外注を使うメリットだが、当社のような規模では内製化した方が、コストメリットが出るので最良の策だと考えている」と続けた。

 マーケティング領域、特にデジタルマーケティング領域において、内製化するメリットは大きいことが分かるパネルディスカッションとなった。