玩具販売チェーン店「トイザらス」を全国展開する日本トイザらスは今秋から、店舗とEC(電子商取引)サイトの購買データ、そして店舗やカタログで関心を持った商品データとを統合したCRM(顧客関係管理)施策に取り組む。購買データだけでなく店舗やカタログの行動データを組み合わせることで、「興味を持ったものの、買わなかった商品なども分かる」と日本トイザらス執行役員の高野恵マーケティング本部長は言う。

AR技術を活用したスマートフォン向けアプリ「かざすカメラ」
AR技術を活用したスマートフォン向けアプリ「かざすカメラ」

 トイザらスがCRMの戦略強化を推進し始めたのは、2年前のこと。少子高齢化の影響などで、今後、顧客のパイが小さくなる可能性は高い。また、玩具を利用する年代は限られており、顧客でいる期間にも限りがある。こうした中、いかに顧客との関係性を築くかがマーケティングにおいて重要となる。そこで、データに基づいて、顧客との関係性を構築できる仕組みづくりに取り組んできた。「当社には会員組織があり、子供の年齢などの顧客情報も取得しており、かなり大きなデータベースになっていた」と高野氏は言う。

 ただ、課題となったのは店舗やカタログに関するデータだ。購買情報は会員IDベースで把握できるが、店舗やカタログで、どの商品を見ていたかは当然、分からない。「どのような商品に興味を持ち、結果的に買ったのか、あるいは買わなかったのか。そうしたデータを精緻に分析すれば、店舗での商品展開や販促方法といったマーケティング戦略の立案に生かせるのではないかと考えた」(高野氏)。

スマホアプリでカタログに付加価値

 では、具体的にどのように店舗やカタログの商品閲覧データを取得するのか。そのツールとして同社が開発したのが、AR(拡張現実)技術を活用したスマートフォン向けアプリ「かざすカメラ」だ。かざすカメラは、店舗やカタログで見つけたアプリ対応商品を、スマートフォンのカメラ機能で画面に写すと、ARコンテンツを見たり、商品の遊び方の動画を見たりできる。

 同アプリは当初、来店の促進策として開発した。トイザらスではシーズンごとに顧客に商品カタログを送付しており、そこにカタログと連動したコンテンツを提供し、新たな情報を付加することで、実際に商品を触ってみたい、遊んでみたいと思ってもらうことを狙った。

 例えば、最新のカタログではアニメ映画『ミニオンズ』のキャラクターの玩具が一面に掲載されたページを、かざすカメラを通じて閲覧すると、画像に反応して、赤いアイコンが各玩具ごとに表示される。このアイコンをタップすると、それぞれの遊び方を示す動画などがスマートフォンの画面上で再生される。こうした動画で興味を引き、来店につなげようとしている。

 より直接的に来店につなげようという取り組みも実施している。同じく最新のカタログの表紙を、かざすカメラを通じて閲覧すると、海の中にいるような映像が、スマートフォンの画面上に、実世界に重なる形で表示される。この映像を撮影して、その写真を店舗で店員に見せると、特典がもらえるといった企画だ。

 商品動画やARを活用した映像は、店頭にある対象商品のPOPなどを、かざすカメラを通じて写すことでも見られる。店頭でも玩具の遊び方などを確認してもらおうというわけだ。これまでシーズンごとに施策を実施しており、昨年のクリスマス商戦では約70商品を対象にコンテンツを制作した。そして最新のカタログでは初めて、掲載している全商品をアプリに対応させた。

 とはいえ、すべての商品に動画コンテンツなどを作るのではなく、顧客に強く打ち出す商品以外は、自社ECサイトに誘導して、商品情報などを閲覧できるようにしている。

 こうした企画を実施して、カメラアプリからの集客や店舗での情報提供を実施してきた。ただ、これまではキャンペーン的な展開のみで、顧客データとの統合はできていなかった。そこで、顧客データとかざすカメラの利用データをつなげるために、2月に新たに提供を開始したのが、会員カードの管理アプリ「トイザらス・ベビーザらス アプリ」だ。

ポイントカードアプリでデータ統合

 トイザらス・ベビーザらス アプリはポイントカードをアプリ化したもの。紙のポイントカードの会員番号と設定したパスワードをアプリ上で入力すれば、店舗で会員カードとして利用できる。そのほか、チラシを閲覧したり、クーポンを受け取ったりできる機能が搭載されている。

2つのアプリで関心と購買データを把握
2つのアプリで関心と購買データを把握

 実はこのポイントカードアプリとかざすカメラは裏側でデータが統合されているという。つまり、ポイントカードアプリで会員情報を登録してもらえれば、店舗や自社ECサイトの購買データと、かざすカメラでコンテンツを閲覧したデータとを、会員情報にひも付けて分析できるようになるのだ。

 「かざすカメラを提供し始めてから、1~2カ月に1回のペースでアプリと連携した販促企画を実施してきた。その結果、ダウンロード数やカメラを通じたコンテンツの閲覧回数が、会員情報を肉付けするのに十分な規模になったと判断し、本格的に会員データとの統合を進めることを決めた」(高野氏)

 データを活用したマーケティングを実施する仕組みは整った。実際の施策の実施に向けて、まずは顧客に対して、ポイントカードアプリへの会員情報の登録を促進している。その1つの施策として、ポイントアプリで会員登録をしていることを店舗で確認できると、特典をプレゼントするキャンペーンなどを展開している。

 こうして会員化を進めた上で、今秋からはいよいよデータを活用したCRM施策を具体化していくという。例えば、「ARでコンテンツを見たけれども購買には至らなかった顧客が店舗の近くを通った時に、GPS(全地球測位システム)の位置情報と連動して、アプリに情報をプッシュ配信する」(高野氏)といった施策も可能になる。

 もちろん顧客にとって必要な情報でなければ、かえって顧客の体験を損ねかねない。そのため、店舗やカタログの利用データと購買データを精緻に分析して、顧客に合った情報提供の実現を目指す。また、情報提供だけではなく、得たデータを改めて分析し、店舗での商品展開やレイアウトの変更などにも活用していく考えだ。

この記事をいいね!する