オフィスソフト製品「KINGSOFT Office」で知られるキングソフトがBtoB(企業向け)事業の拡大を急いでいる。その切り札として2016年5月に導入したのがマーケティングオートメーション(MA)ツールだ。見込み客にシナリオ型メールを送信し、そのリアクションに応じてスコアリングし、受注確率が高いと見込まれる顧客を効率的に抽出。情報を営業部門と共有する仕組みを構築した。
MAツールを導入することで、同社がホットリードと呼ぶ「3カ月以内に受注が見込める顧客」の割合を高めることを目指す。現状でメールアドレスなどを把握している顧客のうちホットリードの割合(社数)は20%。「早期に30%に持っていきたい」とMA導入の旗振り役である法人マーケティングDiv.の鈴木健彦ディレクターは話す。

MAツールの導入後、まず着手したのが顧客のスコアリングだ。メールアドレスを把握している全員に自社製品を紹介するシナリオ型ステップメールの第一弾を送信した。内容はすべて同一だが、受け取った顧客の行動に応じてスコアリングした。
点数に応じてカスタマイズ
具体的には、点数が0~39点の人をステージ1、40点~79点の人をステージ2、そして80点以上の人をステージ3と分類。第1弾から1週間後に送った第2弾のメールでは、3つのステージごとに、異なる情報を届けた。
例えばステージ1の人は、まだ同社製品に対する興味関心が薄いと想定し、漫画形式で製品概要を伝えるWebページなどを紹介。製品の導入につながる課題意識を刺激することを狙った。
製品に一定の興味関心を持つと思われるステージ2の人には、製品の機能や価格、導入企業の担当者インタビュー記事のページなどを案内。興味関心を醸成することを狙った。そしてスコアが80点以上のステージ3の人には、製品の詳細情報や無料トライアルを促す内容をメーンにして案内した。
こうしたステージ別のステップメールを1週間に1通ずつ、5週間かけて5通送信。その上で、ステージ3の中で、最も点数が高い顧客層をホットリードとして抽出。その情報を営業部門に渡して、既に営業活動を開始しているという。
キングソフトが導入したのはフロムスクラッチ(東京都新宿区)の「B→Dash」というMAツールである。キングソフトの営業部門が既に導入していたセールスフォース・ドットコム(東京都千代田区)の営業支援ツール「Salesforce」と連携できる点などを評価し、採用した。
だが現状では両システムを連携させるカスタマイズが未完成で、MAツールで実施したスコアリングの結果のデータが営業部門からは見られないなど、課題が残っている。
そこで連携に必要となるカスタマイズ作業を急ぐ一方、MAツールを活用したホットリードの抽出作業なども加速。MA導入に際して掲げたホットリードの割合を10ポイントアップさせるという目標の早期実現に努めていく方針だ。