りそな銀行が、データ解析事業を主に手掛けるFRONTEOが独自開発したAI(人工知能)「KIBIT」を、顧客へのマーケティングに活用する取り組みを始めた。行内でAIを活用できそうな施策を10個選び、7月からプロジェクトとして実用化の検証に取り組んでいる。
そのうちの1つは、各支店の営業担当者がそれぞれ毎日記録する「日報」などに書かれたテキストをKIBITで分析し、同社が扱っている商品・サービスとマッチしそうな有望な顧客を選別。実際に営業担当者がそうした顧客を訪問して商品やサービスを提案し、成約率の向上につなげるといったものだ。
今回のAI導入を牽引する営業サポート統括部の村木淳グループリーダーは、「例えば、各支店の営業を支援する本部部署が、各支店から集まる日報などから成約事例を教師データとして活用し、他の日報をKIBITが分析し、スコア化することで、そのスコアの高いお客さまに対して、お役に立てそうな商品やサービスを提案するよう各支店に指示する、といった活用法を想定している」という。
KIBITはテキストの文脈を読むのが得意なため、例えば、「社長が病院に通って不在」というような表現が同じ顧客に対して繰り返されていれば、KIBITが社長の健康不安を検知し、事業承継に関わる商品やサービスの提案を検討するといったことも可能だという。
業務効率化を狙い6月に導入
りそな銀行は6月にKIBITを導入している。1月から社内のさまざまなデータを活用したPoC(概念検証)を進め、業務の効率化などの効果が実証された2つの領域にまず導入した。
1つは、各支店の営業担当者が顧客とのやりとりを記録した面談記録の解析である。面談記録のテキストをKIBITで解析し、営業担当者が薦めた商品やサービスに対する顧客の反応などをネガティブかポジティブかで分類。さらにネガティブな反応があった記録を、より改善が求められる順に抽出して、接客などの改善が効率的に進められるようにした。
もう1つは、店頭やハガキ、メールなどさまざまなルートで収集する「お客さまアンケート」に記されたテキストの分類。アンケートに記された顧客の文章をKIBITを使って分析し、銀行への称賛、改善要望、クレーム(苦情)のいずれかに分類する。これまでは担当者がアンケートを1つずつ読んで仕分けしていたが、「KIBITの導入で、従来より早くかつ高い精度で分類できるようになった」(リスク統括部金融テクノロジーグループの荒川研一グループリーダー)という。
今回、取り組み始めるマーケティングへの応用を目指した10のプロジェクトは、りそな銀行としてはKIBIT活用の第2ステージという位置づけになる。「検証を進めて効果を見極め、10のプロジェクトのうちいくつかが、今年度中にも実用化されることを目指す」(荒川氏)。