若年の聴取者を開拓するため、LINEを活用したラジオ連動の動画配信に取り組むニッポン放送。編成局編成部企画担当の日下大輔氏に、手応えと次の一手を聞いた。

日下大輔氏:ニッポン放送編成局編成部企画担当<br>2008年4月、ニッポン放送に入社。同年6月、営業局営業2部に配属。2013年11月より編成局編成部トラフィック担当。2016年7月より現職
日下大輔氏:ニッポン放送編成局編成部企画担当
2008年4月、ニッポン放送に入社。同年6月、営業局営業2部に配属。2013年11月より編成局編成部トラフィック担当。2016年7月より現職

「LINE LIVE」による動画配信を導入した背景を聞かせてください。

 10代を中心とした若い層に、「ラジオ」というコンテンツを知ってもらうことが業界全体の課題になっています。今やラジオを持っている人はとても少なくなっていますが、スマートフォンなら誰でも持っていますからね。そこでインターネットラジオサービス「radiko」や「LINE LIVE」といった外部のサービスを利用することで、弊社がリーチできる層を広げていきたいという思いがありました。

 LINE LIVEを導入している「オールナイトニッポン0(ZERO)」という番組は、「若年層帯」と呼ばれる午前3時から放送しています。若い人たちに音声コンテンツとしてラジオを意識してほしいという思いがあるのと同時に、普段見えないものを映像として見られる面白さを提供できると考えました。

 LINE LIVEは、専用アプリが必須でなく、普段使っている「LINE」からでも聴取できるという強みがあります。新しいアプリをダウンロードして聴くとなると、1つハードルができてしまう。

 しかし、LINE LIVEを活用した映像の配信なら、「オールナイトニッポン」のLINE公式アカウントと「友だち」になれば、番組開始のお知らせがメッセージで送られてきて、そのままLINEのトーク画面上で番組を見られます。

LINE LIVEで映像配信を始めて、手応えや効果を感じていますか。

 オールナイトニッポン0では、「アフタートーク」という本編終了後のトークをLINE LIVE限定で放送しています。

 本編は番組内で流した音楽などの権利関係上、アーカイブとして残すことができないのですが、アフタートークを残すことで、結果として本編の聴取者獲得につながる良い流れが生まれています。

 乃木坂46の新内眞衣さんのアフタートークを例に挙げると、ある回では視聴者数が約11万人、(Facebookなどの)「いいね!」に当たる「ハート」が60万個も送られています。こうしたLINE LIVEのアーカイブが番組を知る1つのきっかけとなり、本編を聴き始めた人が増えていることが、リアルタイムの聴取者数が増えたというデータから分かります。

 具体的には、LINE LIVEを開始した2016年4月から約1年後の2017年2月までの間に、LINE LIVEの視聴者数は、新内さんの回で約1.7倍に増えています。

 また、他のパーソナリティーもほぼ同様の伸びを示していますし、(調査会社の)ビデオリサーチのデータによると、本編の聴取者数も増えています。

 若い人たちは番組を聴きながら、Twitterなどに番組に関する投稿をします。深夜の番組なのに、番組内で発したキーワードが「Yahoo!リアルタイム検索」で人気ワードにランクインすることもあり、盛り上がりにつながっていることを実感します。

 ラジオはもともとパーソナリティーと1対1で接しているような距離感で楽しめるコンテンツですが、映像があることでより身近に感じられるのではないでしょうか。

他の映像配信サービスと比較して、LINE LIVEならではのメリットは何でしょうか。

 LINEは、ずばぬけた規模で幅広い年齢層に浸透していることが最大のメリットです。LINE LIVEを見るためにアプリを新たにインストールする必要もありません。オールナイトニッポンのLINE公式アカウントには30万人、「ニッポン放送 LIVE」のアカウントには15万人が登録していて、LINEを通してメッセージを送ることができます。

映像配信のプラットフォームはLINEが中心に

 オールナイトニッポン0は、(NTTドコモの提供していた動画配信サービス)「NOTTV」終了を機に、LINE LIVEでの配信に切り替えました。他にも、「ニコニコ生放送」向けに配信していた「ドコモdスタジオ」をLINE LIVEに移すなど、映像配信のプラットフォームはLINE LIVEが中心となりつつあります。

番組の配信以外でLINE LIVEを活用したことはありますか。

 オールナイトニッポン0では、パーソナリティーのオーディションもLINE LIVEで行いました。ニッポン放送50周年の企画として、パーソナリティーになりたい人に、専用のハッシュタグ(#)を付けてLINE LIVEに動画を投稿してもらい、それをスタッフで審査するという試みです。

 かつては「YouTube」で募集したことがあったのですが、今では人気YouTuberなどが投稿する動画に埋もれてしまう可能性がある。また、若い人の間で最も勢いがあるプラットフォームを使いたいと考えてLINE LIVEを投稿の場として選びました。

 オーディションには693組の応募をいただき、お笑い芸人の「ランパンプス」に決定しました。2017年4月からオールナイトニッポン0の月曜日を担当しています。

LINE LIVEを活用することで、媒体としての価値向上にはつながっていますか。

 オールナイトニッポン0は、時間帯などの理由で、今はまだスポット広告程度しか入っていません。しかし、ニッポン放送全体では、こうした取り組みができるという実績になっているため、広告主からも「LINE LIVEをやってほしい」という要望を多くいただいています。特に、映像という「絵」が勝負になるような広告主さんからのご相談が目立ちます。

 当社の営業やLINEとも、新たな広告商品が開発できないかと定期的にアイデア出しを行っています。今はパーソナリティーが自分のオフィシャルグッズなどを周囲に置いて映像を放送することがありますが、今後はそうした形で、スポンサーの商品をプロダクトプレイスメント(商品を映り込ませる広告手法)で宣伝するといった施策も考えていきたいです。

 現在ラジオ局でLINE LIVEをレギュラーで使っているのは当社だけです。深夜の時間帯でしか使っていませんが、今後はさまざまな時間帯の番組でチャレンジをしていきたいと考えています。

 ラジオ単独ではなく、radikoやTwitter、LINE LIVEなどを組み合わせて、「届け方」を考えなければならない状況です。今後もコンテンツメーカーとして積極的にデジタルサービスを活用することで、媒体としてのラジオの価値向上に務めたいと思っています。