「モノ消費からコト消費の時代へ」という言葉は企業のマーケティング担当者であれば耳タコ状態であろう。ではそれを踏まえた"売り方"ができているかといえば自信を持って手を挙げられる人は少数派だろう。そんな難問に果敢に取り組んで成果を上げ始めているのが、日本ハムが昨春から運営を始めたバーベキュー情報サイト「BBQ GO!」だ。

日本ハムのバーベキュー情報サイト「BBQ GO!」
日本ハムのバーベキュー情報サイト「BBQ GO!」

 日本ハムは連結売上高が1兆2000億円を超える巨大企業。「シャウエッセン」や「森の薫り」といったソーセージブランドも有名だ。それでも競合他社ではなく日本ハム製にこだわってブランド選定している消費者が多いかといえば、そうは言い難い。数百万から数千万人という単位の一般消費者に自社商品が継続的に選ばれ続けるために、どうアプローチすればよいか。この課題に向き合い突き詰めて考えた結果、浮上したのが「バーベキュー」というテーマを掲げての訴求だった。日本生産性本部「レジャー白書」によれば国内のバーベキュー参加人口は年間で2000万人超の規模がある。日本ハムコーポレート・コミュニケーション推進室の藤本芳人氏は、サイト開設の経緯について次のように語る。

 「商品情報を充実させても『ハム』『ソーセージ』『燻製』といったワードはあまり検索されない。そこで肉商材に関連のあるキーワードを、検索ボリュームが多いか少ないか、競合サイトが強いか弱いか、この2軸でマッピングしてみた。ハム・ソーセージは競合は少ないが、やはり検索数が少ない。検索数が多いのは『グルメ』『レシピ』『レストラン』『ギフト』といったところだが、今から始めるには競合が強すぎる。それなりに検索規模があって競合が少ないジャンル、それが『バーベキュー』だった。2年前時点で年間1500万件の検索ボリュームがあった」

ワクワク感が高まっている愛好家が集う

 バーベキュー関連の検索は、その多くが「バーベキュー 東京」「バーベキュー 大阪」など場所との同時検索になっているという。「全国のバーベキュー場を網羅したポータルサイトを構築できれば、場所探し、食材探しをするワクワク感が高まっている状態のバーベキュー愛好家が集う、価値の高いコミュニケーション接点を得ることができる」(藤本氏)と踏んだ。

 バーべキュー場検索サイトは「るるぶ」なども提供しているが、そこは肉製品製造・食肉卸のトップ企業だけあって、バーベキュー愛好家が知りたい情報のツボは押さえている。手ぶらプラン、食材持ち込み、片付けサポート、ペット同伴などの有無、可不可をアイコンで分かりやすく表示し、最寄りの買い出し店やトイレ、周辺のアクティビティーなどについても、きめ細かく情報提供している。

 準備や道具、レシピ、おすすめスポットなどのお役立ち読み物コンテンツを平日ほぼ毎日更新している。昨春、バーベキュースポット800カ所、レシピ数200件でスタートしたサイトは、現在1200カ所、500件に増強され、「バーベキュー (場所)」の検索でほぼ1位表示されるようになり、バーベキューファンが実際に出かける前の“通り道”となった。

 現状、バーベキュー場から掲載料や広告料を取るビジネスはしておらず、他社商品を取り扱うバーベキュー場も平等に網羅している。ファン目線で利用価値の高いサイトを構築したことで、同社にビジネスチャンスが広がっている。

 7月には同社のレトルトカレー商品「レストラン仕様カレー」を全国38カ所のバーベキュー場で計1万パック、無料サンプリングした。バーベキュー場とのコネクションをキャンペーン展開に生かしている。また、食品スーパーとのコラボレーションでハンドブックをバーベキュー食材売り場で配布し、そこで日本ハム商品を訴求するプロモーションも展開した。

 今後は、例えば「シャウエッセン」を持ち込んだお客に入場料を割り引くプロモーションに協力してくれるバーベキュー場に対して、検索上位表示や広告表示で集客を支援するといったコラボレーションプログラムを検討している。バーベキュー場とウィン・ウィン関係を構築し、バーベキュー人気の維持拡大を図ることで、自社商品が売れる仕組みづくりを目指している。

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