限られた人数しか参加できないリアルのイベントでありながら、リアルタイム動画配信とSNSを組み合わせることで、ネットを介して77万7000人もの参加者を集める。そんな成果につなげたのが、ELGC(東京都千代田区)が展開する化粧品ブランド「クリニーク」だ。「イベントにかけたコストや配信費に対して、十分成果に見合う人数にリーチできた」とELGCクリニーク事業部マーケティング本部デジタルコミュニケーショングループの坂口ゆうこマネージャーは胸を張る。

セレイナ・アンさんのアカウントを通じて動画を配信
セレイナ・アンさんのアカウントを通じて動画を配信

 施策のきっかけは、グローバルブランドの日本法人ならではのマーケティング課題にある。クリニークは7月1日に、拭き取り型のスキンケアローション「クラリファイング ローション」シリーズに、新たに「クラリファイング ローション1.0」を加えた。そして、この新製品の発売に合わせて、新たなグローバルキャンペーンを展開し始めた。

 キャンペーンは、たった一拭きで角質が取れて肌が変化するという製品の特徴を、「変化へ、一歩。」というキャッチコピーで表現。自分自身で人生に変化を起こし、夢を叶えた女性を起用した動画を配信している。ただ、グローバルキャンペーンで、「外国人を起用した動画のため、日本人にとっては、身近に感じてもらいにくい」(坂口氏)。国内のターゲット層に、自分事として実感してもらうためには、独自のキャンペーンを実施する必要があった。

 そこで、日本で活躍し、若い女性の支持を集める歌手のセレイナ・アンさんに製品を試してもらい、その魅力を伝えるイベントを7月7日に実施した。セレイナ・アンさんはYouTubeやリアルタイム動画配信サービス「ツイキャス」を通じて、歌唱動画を発信し続けて人気を集めて、歌手になる夢を果たした。まさしく自ら人生に変化をもたらした経験を持つことから、キャンペーンのテーマにフィットした。

Twitterの新広告メニューを活用

 イベントでは製品を試すだけではなく、本キャンペーンに向けてセレイナ・アンさんが書き下ろした新曲「CHANGE」を披露してもらうことにした。そのイベントにネットを通じて、広く参加してもらうために目を付けたのが、米ツイッターの提供するリアルタイム動画配信サービス「Periscope」だ。Periscopeはスマートフォンのアプリだけで、リアルタイム動画を配信できるもので、このサービスを使って、動画を配信することにした。

 リアルタイム動画を配信できるサービスは群雄割拠となっているが、その中からPeriscopeを選んだ大きな理由は、広告との連動性だ。ツイッターが提供しているサービスのため、Twitterの新たな広告メニュー「プロモPeriscope」を活用して、ターゲット層に絞って効率的に動画を広められることが決め手になった。

 イベント当日には2つのTwitterアカウントから動画を配信した。まず、クリニークのTwitterアカウントではクリニークの社員がイベントの趣旨やブランドメッセージを伝える動画を配信。一方、セレイナ・アンさんのTwitterアカウントでは、ファンを中心に拡散してもらおうと、トークショーや歌唱の動画、実際に製品を試す動画を配信した。それらをプロモPeriscopeを活用して、セレイナ・アンさんのアカウントをフォローしている層と近しい人や、クリニークのターゲットとする美容誌のTwitterアカウントをフォローしている人を対象に広告として配信した。

 いざ広告を配信すると、すぐさま効果の違いが表れた。「セレイナ・アンさんの動画の方が圧倒的に閲覧数が多く、エンゲージメントが高かった」(坂口氏)ことから、即座に広告予算の配分を変えて、セレイナ・アンさんのTwitterアカウントを通じて配信した動画の広告費を厚くした。

 その結果、動画配信開始から24時間で動画を掲載したツイートのインプレッションが839万5000になった。そして累計の参加者が77万7000人に達するという大きな成果につながった。

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