日本人の4割以上に当たる5431万人が利用するという、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の「Tカード」。20代に限ると利用者数は全体の7割以上(6月末時点、名寄せ後の数字)を占めるという。加盟企業も増え続けており、日本最大級の会員プラットフォームにまで成長した。

 そのTカードによって収集・蓄積された膨大な消費行動データは、個人情報は含まれないが、マーケティング上は極めて価値あるデータとなる。そのデータを活用し、加盟企業のマーケティング支援を行うのがCCCマーケティングだ。同社マーケティング本部マーケティングソリューション部の伊勢﨑さゆり氏が「Digital Marketing Week 2015」3⽇目に登壇。「5300万人のT会員基盤を活用した、ビッグデータ最前線」と題した講演で、Tカードだからこそ可能なデータ分析と施策を紹介した。

ちゃんと使われているカードのデータ

 伊勢﨑氏は、Tカード会員の現状について「会員のうち、月間では7割以上、週間では4割以上が利用している」と、会員数が多いだけでなく、“本当に使われている”カードであることを強調した。小売業以外の加盟企業が増えたことで、把握できるデータも多様化。購買情報はSKU(商品の最小管理単位)で記録されるなど、国民のリアル消費行動が集約されたデータとして活用のポテンシャルは高い。

CCCマーケティング マーケティング本部 マーケティングソリューション部 プランニングユニット ユニットリーダー補佐 伊勢﨑さゆり氏
CCCマーケティング マーケティング本部 マーケティングソリューション部 プランニングユニット ユニットリーダー補佐 伊勢﨑さゆり氏

 例えば、すかいらーくグループが発売した「12種類から3種類を選べるメニュー」では、ID-POSから抽出した商品の組み合わせごとのトライアル&リピート率データとTカードの属性データを組み合わせて分析。支持されるメニューに最適化することで販売効率を高めた。全体的な人気は低くても、特定層に強く支持されるメニューは、切り捨ててしまうと大きな損失になりかねない。伊勢﨑氏は「“誰に利用されているか”まで把握することで、これまで見えなかった商品特性を発見できる」と、分析のポイントを説明する。

 また、Tカードのデータは購買情報が基本だが、CCCマーケティングではそのデータを基に約300項目の生活属性と志向性に分類する「顧客プロファイリング」を開発。「同じ商品が売れそうな別の顧客層」や「同じ顧客に売れそうな別の商品」が把握できるので、性別や年代を超えたターゲティングが可能になるという。

 Tカードデータは、リアルな店舗だけでなくデジタルの場でも有効だ。Tカードのデータに基づき、DSP(デマンド・サイド・プラットフォーム)を活用して広告を出稿して、旅行会社の無料会員登録を訴求したところ、Web訪問履歴に基づいたターゲティング広告と比較して、1.8倍のコンバージョン率(CVR)を叩き出した。

 さらに、映像作品「エヴァンゲリオン」とカゴメ「野菜生活100」がコラボレーションした販促キャンペーンでは、TSUTAYAの購買履歴から「過去1年間の間にエヴァンゲリオン関連商品を買ったり借りたりした層」へDSPで広告を配信。さらに、広告と接触後に購入したかどうかまで追跡して効果検証を行った。「インプレッション、クリック、動画それぞれで、購入率まで把握できる。追跡はTカードの加盟企業の範囲内に限られるが、これまでの広告では見えなかった世界が見える」(伊勢﨑氏)と、マーケティングの新たな境地を開きつつある。

 最後に伊勢﨑氏は「CCCマーケティングの役割は、データベースを活用して、企業に消費者とつながる方法を提供すること」としながら、同時に「Tカード会員に新しいライフスタイルをまだまだ提案していけるはず」と展望を語って講演を終えた。

 データマーケティングの世界では、データを使われる側が使う側の利用法に対して懸念を抱きがちだが、理想は使われる側と使う側の双方にとって実のある結果をもたらすものでなければならない。CCCマーケティングは、率先してそのような世界を目指す。

この記事をいいね!する